疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

ホラーハウス社会

ホラーハウス社会 (講談社+α新書)

ホラーハウス社会 (講談社+α新書)

メディアのまるでドラマの脚本のように事件を報道するセンセーショナリズムで不安を煽る手法を「ホラーハウス」に準え、その中身を解き明かす。酒鬼薔薇事件以来、少年犯罪が増加、凶悪化したと各メディアでは報じられていたが、犯罪白書のデータを見れば分かるとおり、1960年代に比べ、殺人を含め少年犯罪の件数は大幅に減っている。更に、一家4人を殺害して金を奪った上に放火した永山則夫事件、優等生として認知されていた少年による猟奇的な事件など、「凶悪」と思われる犯罪は昭和時代からあった。

それにもかかわらず、平成に入ってから少年犯罪が増加、凶悪化したという虚偽の情報が広まった背景にあるのは何か?著者は、住民が嬉々として防犯活動、治安管理に勤しみ、秩序を乱すものを監視、隔離し、恐怖を快楽として消費するホラーハウス社会を作り上げていることを指摘している。
非常に興味深く、内容も正鵠を射たものだと思った。最近は治安が悪くなったと言われていますが、そう断定せず、冷静に世の中を見つめていくのが大事だろう。

人々は連日報道される凶悪犯罪に目を顰めながらも、メディアの必要以上に不安を煽るセンセーショナルな報道に怯えつつも、どこかでそれを娯楽のように消費する節があるのかも知れない。そういうことを考えさせられた。