行雲流水

ごきげんよう

教育問題はなぜまちがって語られるのか?



教育問題の議論をめぐる問題点を抉り出した本。一般的に教育問題となると、権威主義的、実感主義的、体験主義的、情緒的な言説が飛び交いがちである。すなわち、

・「今の子供は自由と自分勝手を履き違えている。とにかく体罰によって言うことを聞かすべき。体罰に反対する連中は頭でっかちで何もわかっていない」
・「自分は体罰を受けたからやっていいことと悪いことの判断が付くようになった。今の子供にもそうすべきだ」
・「昔も若者はもっとしっかりしていたのに、最近の若者はマナーが悪く、勉学にも就職にも消極的だ」
・「○○国の若者は目が輝いていて素晴らしい。それに比べて日本の若者のなんとだらしないことか」
・「ダメ親、ダメ教師が増えた」
・「少年犯罪やいじめは多発化、凶悪化、低年齢化している。心の闇をなんとかしないと」

といったようないい加減な内容。この中には既知の情報も多くあったが、「教育で対処できることとできないことを峻別する必要がある」という「教育万能主義」の見直しは新しい視点だった。

上記のようなトンデモ言説の対処法として

・(教育をめぐる事件の発生原因やトンデモ言説が蔓延する)社会的要因を考える
・偏った情報にも耳を傾けた上で改善する
・「よくないもの」、「よりよいもの」を選別する
・「偏りのない、無色透明な言説」は存在しないことを自覚する

といったことが列挙されている。ここだけピックアップすると何だか情報リテラシーの本みたい。この本は高校生や大学生といった若い世代も対象にした本らしいので、それでいいのかもしれないが。 この本は実直でまともなことしか語っていない。逆に言えばまともなことしか語っておらず、私にとっては斬新さと面白味に少々物足りなさが残ったが、お勧めの一冊。