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L'aube de l'horizon

ごきげんよう

「リトルバスターズ!Converted Edition」

正直、ギャルゲーを馬鹿にしていた。

リトルバスターズ!Converted Edition

リトルバスターズ!Converted Edition

あくまでも友情物語


本作のテーマは「友情」。恋愛AVG(いわゆるギャルゲー)としては異例のテーマらしい。主人公の理樹は安易なハーレム設定そして、恋愛AVGの周回プレイが前提という形式を利用した構造になっていたのは見事。

ストーリー(個別ルート)

ギャルゲーの恒例行事(?)ヒロイン攻略。本作の個別ルートの評価は微妙だったという意見は多い。だが、私にとっての最初のギャルゲーが本作ということで、そこまで悪かったとは思わない。

神北小毬ルートは兄との死別からの立ち直りを描く。明るくてどこかメルヘンな雰囲気の彼女は、自分の作り出した幻想世界に生きていた。身近で再び死を目の当たりにしたことで心を壊してしまう…。一応彼女が本作のメインヒロインらしい。ということは、鈴はもう一人の主人公か。

三枝葉留佳ルートは深刻な家庭の事情に触れる。学校内で風紀委員へ当て付けるかのように悪戯に走る彼女の抱えるバックグラウンドとは。初回プレイで彼女のルートに突入したためか思い入れが深い。

来ヶ谷唯湖ルートも彼女ならではの事情を描く。常に余裕と貫禄を振りまく彼女が、執拗な嫌がらせに対してマジギレしたシーンはインパクト大。嫌がらせをした側の声優の演技も迫真的だった。そして、デートを盛り上げるため打ち上げ花火を調達するなど、恭介たち男性陣の頼もしいバックアップが光るルートでもあった。

西園美魚ルートは哲学的というか、文学的なお話。人が人たり得るのは、他の人に記憶されるからなんだろうね。そして彼女がいつも日傘をさしている理由…。村上春樹世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』に通じるものがあるかも?

能美クドリャフカルートは彼女の特殊な生い立ちを主に扱う。日本人とロシア人の血を引き、外見はロシア人に近い彼女は、日本語は得意だが英語は苦手だというギャップに悩んでいたが…。クドルートは話の規模が広がりすぎて大味な印象は払拭できなかった。

棗鈴ルートはRefrainに到達するために二度通る必要のある道。そして「世界の秘密」へと到るための重要なフラグも用意されたルートである。県議の学校訪問への応対と、バスの事故で心身に傷を負った生徒の通う学校への訪問、という具合に極度の人見知りの鈴にとっては荷が重過ぎる課題が矢継ぎ早に彼女にのしかかるが…。本作ではクドと葉留佳・佳奈多ルートが鬱と言われるけど、Refrainに到るまではこれも十分鬱だった。

笹瀬川佐々美ルートは鈴のライバルである彼女と、彼女が飼っていた黒猫の話。佐々美が黒猫になってしまうという設定は突飛だったが、各ルートの中でも文句なしで一番「良い話」だったと思う。

二木佳奈多ルートも双子の妹である葉留佳ルートと同様、家庭の問題に迫る。彼女が風紀委員長として自分にも他人にも厳しすぎるほどに振舞っていた理由とは。 本ルートの終盤でリトルバスターズが原点に立ち返った。

朱鷺戸沙耶ルートは学校に隠された地下迷宮を探索するというアドベンチャーらしい内容。というか、完全に別のゲーム。どこかおっちょこちょいなスパイの沙耶と共に、地下迷宮の最下層にある秘宝の獲得を目指す。

ストーリー(refrain)

本作の要。これが本作の全てと言っても過言ではない。これまで恭介が突然思い付いたかのようにリトルバスターズを野球チームとして再結成して間もなく、メンバーがすぐに集まってくる、といった妙に都合の良い展開に理樹が疑問を覚えていたが…。

本作で何度も示唆されていた「世界の秘密(=本作における現実世界)」はそこから明らかに。そこではリトルバスターズ全員を乗せた修学旅行のバ スが崖から転落する。理樹と鈴はそれぞれ真人と謙吾に庇われ、奇跡的に無傷だった。が、未熟な2人はこの凄惨な現実を目の当たりにして絶望してしまう、と 考えた恭介は他のメンバーと意識を共有して2人を成長させるため「虚構世界」を作り上げる。因みにこのままだと理樹と鈴以外は事故死することになっていた。

それまでの個別ルートは全て虚構世界内での話だった。私は個別ルートだけでも確かな恋愛AVGという印象だったが、これには驚きを隠せなかっ た。正直、ギャルゲーを舐めていてサーセンw ギャルゲーは複数回に亘って周回プレイするのが原則だけど、そのシステムを上手く利用している。

Refrainでは理樹が自らがリーダーとして鈴を伴って真人、謙吾を巻き込み、恭介に手を差し伸べてリトルバスターズを再結成する。かつて恭 介が暴れん坊だった真人、剣道一筋だった謙吾、両親を亡くして塞ぎ込んでいた理樹の心を開いていったように。ずっと恭介の背中を追い続けてきた理樹は、兄 の如く慕う彼にようやく追い付いた。こうして虚構世界が消滅するのだが、ここで理樹と鈴に対して冷徹に振舞うこともあった恭介が「俺だってお前たちと一緒 に居てえよ」、「俺のほうがずっとずっとお前らの事が好きなんだよ」と秘めた本音を絶叫と共に吐露するシーンは本作のハイライトである。

そして現実に引き戻される2人。状況は悲惨だったが、今まで培った経験を基に、事故に遭遇した全員を助けることに成功する。こうして理樹は恭介にも成し得なかった奇跡を起こす。それは心に傷を負った鈴を支え、彼女と共に恭介たちを無事に生還させたこと。何はともあれ、ハッピーエンドに終わって安堵した。

音響

BGMはそのシーンの雰囲気にマッチしているものばかり。個人的ベストは試合のときなどに流れる「死闘は凛然なりて」。あと恭介たちとの別れのシーンでの「遥か彼方」とか、涙腺を緩ませてくれる。

声優のMVPはやっぱり恭介役の緑川光かな。Keyどころかエロゲーギャルゲーに頻繁に出演する声優さんらしい。おふざけのシーンとシリアスなシーンのギャップが良かった。

キャラ

恭介、真人、謙吾の3人の魅力で満点。男キャラがヒロインたちの引き立て役、という作品は多いだろうが、本作ではヒロインたちが彼らの引き立て役、と表現しても過言ではない。

真人はまさに「愛すべき馬鹿」だった。恭介曰く「おまえの馬鹿は人を幸せにする」そうだが、まさに言いえて妙なり。典型的な脳筋キャラに見えて、ストーリーの随所で周囲(特に理樹)に対して落ち込んだときにさり気なくフォローや気配りをできるナイスガイ。

謙吾も良いキャラだった。居心地の良い虚構世界の中でいつまでも遊んでいたいという彼の気持ちは痛いほどわかった。強引な恭介のために身体を張る姿が頼もしくも、どこか切ない。全てのキャラの中で最もリトルバスターズに強い愛着を抱いている故か。

恭介は文句なしの頼れるリーダー。塞ぎ込んでいた理樹に広い世界を見せたり、初めて真人と戦って「おまえと戦えて、すげー楽しかった」と言ったりして以来の童心を忘れない、良い意味で子どもらしいキャラ。友人にするなら間違いなく。

そして個人的に好印象を持ったのは恭介の考える友情や独り立ちの在り方。彼のやり方は冷徹かつ強引で、結果的に鈴を傷付けることになった。だが、「助けるやる」というどこか傲慢な姿勢よりも、「困難に立ち向かえるよう成長を促す」という姿勢は正しかったと思う。あえて苦言を呈するなら、もう少しソフトに導くべきだったかな、ということぐらい。私が「魚を与えるよりも魚の獲り方を教えるべき」、「自分を救えるのは自分だけ」 と考えるタイプだという理由もあるけど。

なお、これは個別ルートで理樹のヒロインたちへの接し方にも通じる。確かに理樹はヒロインたちをサポートしてはいたけど、「助けてやる」という態度はとっていなかった。ここでも理樹は恭介の歩んだ道を知らぬ間に辿ったということか。

映像について

本作と同様にKeyが制作に関わっている「Angel Beats!」の時もそうだったが、Na-Ga氏デザインのイラストが好き。

ミニゲームについて

野球、バトル、地下迷宮探索などのミニゲームが存在する。基本的にお遊びのミニゲームなので、ゲームの進行に影響しない。だから、完全に息抜きとしてプレイできる。どうせなら野球の試合も、指示するだけでなく実際にプレイしてみたかった。