疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

共産党宣言

マルクス・エンゲルス 共産党宣言 (岩波文庫)

マルクス・エンゲルス 共産党宣言 (岩波文庫)

万国のプロレタリア団結せよ

「今日までのあらゆる社会の歴史は階級闘争の歴史である」という有名な句に始まるこの宣言は、階級闘争におけるプロレタリアートの役割を明らかにしたマルクス主義の基本文献。マルクス(1818‐83)とエンゲルス(1820‐95)が1847年に起草、翌年の二月革命直前に発表以来、あらゆるプロレタリア運動の指針となった歴史的文書である。

本書によると、ブルジョア階級は市民革命を経て生産手段を獲得した。工業技術の飛躍的向上で産業革命が起こると、工業が大規模化。それと並行してブルジョア階級に搾取される労働者が増加していく。彼らは被搾取者として自らの役割を自覚し、向き合うことで、やがて階級闘争に発展。こうしてプロレタリアートが必然的に勝利することを予見する。

ここまでが本書の概要だが、かなり論理的に型にはまった理論構成だな、と思う。市民革命によって従来の前近代的な職人の師弟関係に根ざした生産体制が崩壊し、機械による大量生産が行われるようになると、労働者は責任者や工場長を上官とする産業という軍隊の尖兵となる。つまり、労働者が単純な労働力を提供するだけの「部品」になり果せてしまう。こうした冷たい現実をありのままに労働者に突きつけるマルクスの骨太ぶりには感嘆を禁じえなかった。