疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

向晩的迷途指南

今後は気が向いているときにブログを更新していきます。まだまだ書くモチベーションがあるので、続く限りは積極的にやっていきたいです。

さて、ここで文体を変えていきます。近況報告でもない限りは常語で行く予定。



今日は新しい仕事の初日ということで、オリエンテーションのことから話を始めたい。

オリエンテーション(orientation)は学校や会社の新入生や新人社員が新しい環境に順応するために受ける「方向付け」意味だが、これは「東洋」を表すOrientと語源を同じくする。特定の方向に向かわせる、というのが何とも興味深い*1

ところで日本語にも似たような意味で定着した単語がある。それが「指南」である。今でこそ剣術指南や指南書というように、「その道の師匠が弟子に対して指導する」という意味で使われている。が、その出典である『易経』の「説卦伝」には

聖人南面而聽天下,嚮明而治。蓋取諸此也。
聖人は南面して天下を聽(き)き、明に嚮(むか)ひて治む。蓋(けだ)し諸を此れに取るなり。

とある。「聖人は南を向いて天下の情勢を聴き、明るい方角に向けて世の中を治める」という程度の意味合いといったところ。

また、この一節は日本で1868年から1912年まで使用された元号「明治」の出典にもなっている。この由来も踏まえると「指南」は儒学的、政治的な意味合いの強い用語であることが窺える。黄帝あるいは周公旦が作ったという伝説の残る、古代中国のナビゲーションシステムである「指南車」なんてものもあった。コンパスのように南北の方向はわからないが、一度指し示した方角をずっと向いてくれるお役立ちアイテムである。詳しくはググってね!

なぜ聖人が向く方角が南なのか、と言えば、日中、特に正午には太陽が南に位置するからではないだろうか。聖人が明るい方角である南を向き、指し示すことで世の中を明かるくしようということだと思う。

さて、久しぶりに大学時代の専攻分野とちょっとは関係のある話ができたかな?今後は些細だと思うようなことでも話をしていきたい。

*1:ポルトガル語にも、orientationと意味が同じnortearという単語がある。これは元々「北を示す」という意味である