疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

君の名は。

上映期間中だし、当然(?)の如くネタバレ注意。旅行先の水戸市で時間を潰すべく、そういえば話題になってたっけとその場のノリで見た結果がこれだよ!

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「袖擦すり合うも他生の縁」ということわざの現代版

特に事前情報を仕入れずに見たけど、彗星の壮麗さ、風景や町並みの鮮やかさといったビジュアル面と、夢の中で人格が男女入れ替わることで展開されるストーリーに、知らず知らずのうちに引き込まれた。興行収入65億円は伊達ではないようだ*1

見終えて開口一番の感想は「ホムラチャン!!!」だった。

東京都内の高校に通う立花瀧と岐阜県飛騨地方の糸守町*2に暮らす宮水三葉。別々の場所で別々の高校生活を送る二人は本来だった縁も接点もないままだっただろうが、地球に接近したティアマト彗星から分裂、隕石が糸守町に直撃して町が壊滅するという災害が二人を引き合わせる。夢の中で入れ替わり現象が起こるようになったそもそものきっかけは3年前、糸守町が壊滅する前日、JR中央線代々木駅で夢の中で出会った瀧がいることに気付いた三葉が自分の名を伝えながら彼にリボンとして使っていた組紐を渡したことに遡り…。

人格や記憶が入れ替わる中で、周囲の人間関係をはじめとした二人の日常にちょっとした変化が訪れる一連の流れはコミカルで思わず笑ってしまった。瀧がアルバイト先の憧れの女性である奥寺先輩とお近づきになる、など怪我の功名(?)とも言える関係の好転もあったが。何はともあれ、互いのことを知るため、瀧は三葉に会うべく、夢の中で描かれた糸守の風景画やSNSやブログでのやり取りを行ったことを頼りに糸守を目指すが…。ティアマト彗星の話題に加え、古文の授業で行われた黄昏時とその対義語となる彼は誰時(かわたれどき)の解説や、三葉の祖母の一葉おばあちゃんのあの世を意味する隠世(かくりよ)や、人同士や人と神をつなぎ合わせる「結び」糸守の伝統である組紐の話など、なんだか和の伝統の要素とSFの要素が綯い交ぜになったかのような匂いが漂ってくる。時空が進んだり戻ったり絡まったり、という話も超ひも理論っぽったしね。そして、これらの要素が今振り返ってみればすべて伏線であったことも後から判明する。

糸守町が壊滅し、犠牲者の中に宮水三葉の名があったことに愕然とする瀧。もはや彼女と彼、あるいは彼女と現世との接点は入れ替わり時の記憶ぐらい。その記憶を頼りに三葉実家の宮水神社の巫女でもあった三葉が神に奉納した口噛み酒がきっかけで何とか状況を打開、物語は何としても再開を遂げるべく終盤へと至る。

瀧に渡した組紐を返された三葉、また組紐を髪に結わえることになるが、ここでの組紐リボンの結び方、鹿目まどかが円環の理となった後で暁美ほむらが見せた結び方だった。そうか、誰かと思えば三葉は「ホムラチャン!!」だったのか。夢の中で出会ったような…。悠木碧成分はサヤちんの、危険物取扱という意味ではテッシーの担当になるが。それにしてもこの3人も途方もないことを思いつくものだと思った。何はともあれ、三葉の死を回避させることに成功、隕石墜落から8年後(本編から5年後)中央線に乗っていたことに互いに気付き、ようやく再開を遂げたという終盤の展開からは目が離せなかった。新宿、代々木、千駄ヶ谷一帯が聖地として話題沸騰なのもむべなることだと思う。本編見た後に公式サイトのトップ絵を見ると感動が止まらない。

ひょんなことから接点を持った縁から始まるストーリーというのはSFの王道のひとつとも言えるが、それがいい。ジュブナイルSFという側面から語ると「放課後のプレアデス」のような雰囲気もあった。偶然接点を持った少年少女が現実と夢の狭間のような世界で紡いでいくストーリー展開という意味で。「君の名は。」は一度出会った相手に再会するまでを描いた話で、「プレアデス」は出会って分かれることになってもいつか会えるよね、というメッセージの込められた話ではあるが。

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最後に。ヒロインが断髪するアニメは名作。