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L'aube de l'horizon

ごきげんよう

響け!ユーフォニアム2

アニメ レビュー 百合

語りたい話題には困っていない。今回は2016年で自分が見た中でも最高クラスのアニメである「響け!ユーフォニアム2」について語ってみたいと思う。語るに当たっては3つの切り口から本作を振り返ることにする。

anime-eupho.com


1期と劇場版(1期の総集編)についてはこちら
kamikami3594.hatenablog.com

2年南中勢の事情

府大会を終え、全国大会への最終関門である関西大会を控えた北宇治高校吹奏楽部の中で燻っていた懸案事項が、前年に当時の1年生(現2年生)の大量退部事件以来の不穏な空気だった。その中で残った2年生のうち主要な面々がトランペットの吉川優子、ユーフォニアムの中川夏紀、オーボエの鎧塚みぞれの3人だった。彼女たちは既に退部したフルートの傘木希美を含め、同じ南中吹奏楽部出身の仲良しグループで、部への復帰を考えていた希美だったが…。このあたり、なかなリアリティのある人間関係の問題を直球で投げ掛けてきたなあ、と感心してしまう。

状況が動き出すのは4話に入ってから。オーボエの腕前は確かだが、演奏が「ロボットみたい」と評される内気で無口なみぞれは、自分の唯一の友達と思っていた希美が部に復帰すると聞くも、彼女を避けるような行動を取り続ける。その理由について、優子との会話の中でこう語る。

み「怖い、私には希美しかいないから拒絶されたら」
優「だったら私は何?」
み「かわいそうだから同情してくれた」
優「馬鹿!あんたマジで馬鹿じゃないのっ!誰が嫌いな奴と一緒に行動するの、私がそんなに器用な奴に見えるのよっ!私でもいい加減キレるわよ!誰が嫌いな奴と同情、私のこと友達と思ってなかったの!?希美しかなかったって今まで部活をやってきて何も思わなかったの!?区大会で優勝できて嬉しくなかった?私は嬉しかった。中学から引きずってきたことから解放されたと思った。あんたは違うの?あんたは何にも思わなかって言うの?ねえ!」
み「嬉しかった。嬉しかったけど、それと同じくらい辞めていった子に申し訳ないと思った。喜んでいいのかなって」
優「いいに決まってる!いいに決まってるじゃん。だから笑って」 4話より

「いいに決まってる!」から始まるシーンではみぞれがデカリボン先輩こと優子に手を引っ張られて立ち上がるシーンになっている。教室の日陰にいたみぞれが日向へと引っ張られる、というありがちな演出だけど好きだった。暗く膠着した現状に一縷の光が差し込むという、今後の展望を示唆してくれているような感じがして。ただリボンがでかいだけじゃなかったなデカリボン先輩!

思えば本作を通じて最も成長著しいのは優子かもしれない。全国大会を目前にして後輩の麗奈に掛けた励ましの言葉と、13話の3年生のお別れ会ならぬ「卒部式」で麗奈がソロパートを演奏する時の安らかな表情が記憶に新しい。香織が課題曲のソロパートを担当できなかったことに異議を唱えて麗奈を敵視していた頃を振り返ると尚更。

その後の希美との和解や関西大会を経て、みぞれが嫌いだったと公言していたコンクールについて「たった今、好きになった」*1と笑顔で語る。尊い。

憧れの滝先生

1期に続き2期でも黄前久美子と高坂麗奈のくみれいは健在である。2期1話から二人で浴衣姿で花火大会に行くという暴挙快挙を成し遂げて以降、くみれいの快進撃は続く。

個人的な一押しは5話の関西大会の本番を目前に臨んでの一連の台詞。

麗「私も久美子のために吹こうかな」
久「滝先生の方がいいんじゃない?」
麗「いいの?熱くて息苦しいバラードになるけど」
久「あー、それは困る。曲が変わっちゃう」
麗「でしょ?だから久美子のために吹く」
久「じゃ、楽しみにしてる」 5話より

どれだけ百合パワーワードを提供してくれるんだくみれい(歓喜)。その理由が滝先生のために吹くと「熱くて息苦しいバラードになる」からというのが彼女らしい。「他のとことか、めじゃないほどのソロを見せる」という裂帛の気合いも健在で実に頼もしい。というわけで5話は緊張感と尋常ではない熱量がひしひしと伝わってきた。麗奈の言う通り、十分暑苦しかった。もちろん褒め言葉だよ!2期の麗奈は滝先生が絡むと死んだ魚の目になったり、時折久美子に官能的な表情や仕草を見せるようになったりと、1期とはまた違う角度から人間味を見せてくれるようになったが、5話の麗奈は特に熱かった。

一方でストーリーの進展に伴って滝先生に今は亡き妻がいたことを知る麗奈だったが…。亡き妻と一緒に写っている写真や滝先生本人、このことを知っていてあえて麗奈に話していなかった久美子との会話を経てその経緯を知り、墓参りまでしたのは、彼女なりのけじめだったのだろう。

黄前久美子と田中あすか

本作2期における主軸は、主人公黄前久美子と同パートの先輩にして副部長の田中あすかとの関係の進展であると言っても過言ではない。久美子にとってあすかは頼れる先輩であると同時に、なかなか肚の底を明かしてくれない苦手意識のある先輩だった。1期の府大会前の頃から、ソロパートを麗奈と香織のどちらか吹くかを久美子が尋ねた際も「そんなこと、心の底からどうでもいい」と受け流すなど、本心を語らないことが多かったあすか。その一方で、府大会後の「あんなに楽しかった時間が終わっちゃうんだよ?ずっとこのまま夏が続けばいいのに」、5話関西大会直前の「北宇治の音を全国に響かせたい」などと時折あすかが閉じ込めていた本音を思わず漏らすのを久美子は見逃していなかった。この時の久美子の表情は、思い掛けない事態に立ち会ったような驚きと共に、あすかと同じ気持ちを感じたという安堵の色も見えるようだった。

あすかの同級生にあたる3年生組はにとっても、彼女の存在感は計り知れないものだった。トランペットのパートリーダーだった中世古香織は、1期で「あすかを驚かせたい」といつも中立的・傍観的態度を崩さない彼女の想像の先を上回る自分でありたいと思っていた。何事も器用にこなすあすかに劣等感を抱く部長の小笠原晴香。この内気な部長は彼女のことは特別だと思い込んで、いや、特別な存在であってほしいと思っていた。このあたりの込み入った人間関係の繊細さに思わず感嘆を禁じ得なかった。言葉にしなくてもヴィヴィッドなあすかの存在感が伝わってくる。

物語も後半に入り、あすかと母親との悶着が起こった頃から話が再び動き出す。これをきっかけにあすかが受験勉強に専念するとして全国大会の辞退を決め、部室に顔を出すことも途絶えるようになってしまう。こうした部を覆っていた閉塞的な状況を打破しようとしたのが、我らの黄前久美子だった。復部してほしいという説得に応じないあすかに対して、姉の麻美子にかけられた「後悔のないように」という思いを胸に、仮面を何重にも被ったポーカーフェイスの先輩に本心を余さず吐露する。

「だったらなんだって言うんですか!?先輩は正しいです!部のこともコンクールのことも全部正しい!
でもそんなのはどうでもいいです。あすか先輩と本番に出たい、私が出たいんです!
子供で何が悪いんです!?先輩こそなんで大人ぶるんですか?
全部分かってるみたいに振る舞って、自分だけが特別だと思い込んで!先輩だってただの高校生なのに!
こんなののどこがベストなんですか?
先輩、お父さんに演奏聴いてもらいたいんですよね?誰よりも全国行きたいんですよね?
それをどうして、なかったことにしちゃうんですか?
我慢して諦めれば丸く収まるなんて、そんなのただの自己満足です!
おかしいです。待ってるって言っているのに。
諦めないでください!後悔するって分かっている選択肢を自分から選ばないでください!
諦めるのは最後まで一杯頑張ってからにしてください!
私はあすか先輩に本番に立ってほしい!あのホールで先輩と一緒に吹きたい!先輩のユーフォが聴きたいんです! 10話より」

久美子も状況に流されやすく、ここまで明け透けに本心を語るタイプではなかったことを踏まえると、よくここまで本心を洗い浚い語ることができたものだ、と思わず賛辞を述べたくなる。

極め付けはこれ。あすかが卒業するにあたって最終話で久美子が会話した内容。

久「私、先輩の事、苦手でした。先輩だし、同じパートだから思わないようにしてましたけど、なんか難しい人だなあってずっと思ってました!もしかしたら、嫌いだったかもしれません」
あ「そりゃねえ。だって、そんなことわかってたし」
久「わかってないです!だって今は、大好きですから!」
久「あすか先輩、絶対本心見せてくれなくて、いつも上から見下されてるみたいで。友達のこと、どうでもいいとか言うし! でも、でも、今は寂しいです。先輩が弾くユーフォ、もっと聴いていたいです。私、あすか先輩みたいなユーフォが吹きたい!」13話より

嫌いが好きになるって百合なんだよなあ(直球)
失言から始まった麗奈との関係もそうだが、あすかとの関係も苦手意識から始まった。やはり出発地点が低い所から、標高の高い地点をめざすという筋書きの方がカタルシスが強い。

それはさておき、あすかが久美子に渡した楽譜には、かつてあすかが吹いていた思い出の曲が。その名も「響け!ユーフォニアム」。ストーリー終盤においては、ユーフォニアムの音色を、あすかのそれと聴き間違われるほどになった久美子にふさわしい贈り物だった。

最後に。私はTwitterで本作について語るとき、「不穏」という形容詞を使いすぎだったという自覚がある。特段反省はしていない。むしろ作中から立ち上ってくる不穏さこそ、意欲的に視聴させるインセンティブだった。今はただ、見てよかったと思うだけ。それだけに放送が終わった今はユーフォロスに打ち拉がれている。

*1:この台詞は2016年アニメ流行語大賞で金賞を受賞した。別に流行はしていない気がするが