行雲流水

ごきげんよう

機動戦士ガンダムSEED Destiny

前作「SEED」を見終えてから種運命を見始めるまでブランクが空いてしまったが、まあいいや。

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kamikami3594.hatenablog.com

未来を創るのは、運命じゃないよ

たまには1,2クールで完結しない長いアニメを見てみたいと思っていた中、Twitterのフォロワー某氏に勧められて見始めたガンダムSEEDシリーズ。前作と本作を合わせて100話+α見終わったという走り切ったという達成感は強かった。

本作の主人公はZAFTに属するコーディネイターシン・アスカ。オーブでの戦闘に巻き込まれて両親と妹を喪った経験から戦争やオーブを憎んでいた。前作におけるヤキン・ドゥーエ戦役の英雄であったアスラン・ザラが自らの上官となったこと、アスランの父親であったパトリック・ザラの思想にかぶれたテロリストの仕業で宇宙コロニー・ユニウス・セブンの残骸が地球に降り注いで地球が甚大な被害を受けたことで運命の歯車が狂いだす。

見応えがあったと思うのは良くも悪くも喜怒哀楽の激しく向こう見ずなシンを主人公に据えた物語。ストーリ開始早々の段階で、傍から見ていて常に危うさを隠さないシンに感情移入することができたのが本作を楽しめた秘訣だった。アスランカガリへの反抗的な態度と衝突、クレタ島沖や黒海での海戦で見せた狂戦士ぶり、心を通わせたエクステンデッドの少女・ステラとの邂逅とミネルバのクルーとの悶着、そして別れ、脱走したアスランの乗機を撃墜したことによる増長、そしてアスランも加わった三隻同盟との戦いと敗北…。戦闘シーンから人間ドラマの描写、楽曲に至るまで動的なうねりに富んでいて見ていて飽きが来なかった。まあ、巷間の評価通り納得できない部分もあるにはあるが、大筋では見てよかったと思う。退屈さや不毛さは本作とは無縁だった。

SEEDシリーズが志向した初代やΖへの原点回帰という視点から語るなら、もっと教養小説的な展開にすることが本作には求められていたのではないか。具体的には、18話でアスランと意見を交わしつつ狭い坑道を通ってローエングリンを撃破した時のような実績と信頼関係を積み重ねていくことが多くの視聴者の要求であったと思う。だが、後の展開でアスランの乗るセイバー・ガンダムがシンがキラの乗機フリーダム・ガンダムに微塵切りにされて撃墜され、ステラがフリーダムの猛攻に斃される中盤の展開を過ぎてから雲行きが怪しくなる。最終的にアスランは内通を疑われ、メイリンを伴って脱走。同僚のレイとも意見を異にする。気が付いたら自分のそばにいた理解者がルナマリアだけになるという展開など誰が最初に想像できただろうか。自分の力の使い道を顧みず力任せに戦って増長した末の応報とはいえ、このあたりのシンの扱いは少々理不尽ではないかと思わざるを得ない。彼には誤った道を歩んだ時、それを諫止してくれる人がいなかったのだ。そのおかげで「ヒーローごっこはやめるんだ」「過去に囚われたまま戦うのはやめろ」といったアスランのシンに向けた言葉はどこか虚しい響きを伴っていた。

ただ、シンが最終的にアスランに敗北したという結末自体は別に問題ではないと思う。シンの敗北は彼の自縄自縛という意味では納得している。彼は一敗地に塗れることで初めて次の世界に繋がる扉の鍵を手にすることができたのではないか。そのため、過去の所業のツケを払うために完膚なきまでの敗北を喫する以外の選択肢は最終話の時点で既に断たれていた。新たな乗機デスティニー・ガンダムのヒール感を漂わせる機体コンセプトといい、対艦刀の名前がアロンダイトであることといい、シンのたどった道がこの剣の持ち主だった円卓の騎士ランスロット*1のそれと符合させているかのようだった。やはり彼に課せられたのはダークヒーローとしての役割だったのだろう。最終3話のスタッフロールでの扱いは屈辱的だったが、シンは戦争の、コズミック・イラの加害者兼被害者としてその役割を全うした。シン・アスカは間違いなく「機動戦士ガンダムSEED Destiny」の主人公の一人だ。

個人的にはシン・アスカというキャラはかなり高く評価している。今まで見たことがあるガンダムシリーズはおろか、あらゆるアニメや漫画のティーンエイジャーの少年主人公キャラの中でも1,2を争う程度には気に入ったキャラ*2である。アスランカガリに暴言を吐いた時も、ステラに関する処遇を巡って軍規違反を繰り返した時も、図らずも恩人のトダカ一佐を戦死させた時も、デュランダルの口車に乗って増長していた時も、終始一貫見ていて放っておけなかった感がある。多分本作がリアルタイムで放送されていた頃、つまり私がシンやキラと同世代の頃に見ていたら、シンは嫌いなキャラの筆頭候補だったかもしれないが。あの頃の自分はシンと同じように増長していたし、同属嫌悪を抱いたこと間違いなし。

最後に本作の印象深いやり取りを引用して筆を擱くことにする。きっとシンも少しは救われたと思いたい。

「いくら綺麗に花が咲いても、人はまた吹き飛ばす」(8話)

「いくら吹き飛ばされても、僕らはまた花を植えるよ、きっと」(51話(特別編))

P.S.でもSEEDシリーズで一番好きなキャラはイザークなんだよな…。

*1:最高の騎士と称えられながらもアーサー王の妃ギネヴィアとの道ならぬ恋に落ちてアーサーを裏切った

*2:そもそもティーンエイジャーの少年の主人公で好きなキャラなんてほとんど挙がらない、男性主人公で好きなのはほとんど20歳以上じゃないかと突っ込んではいけない