行雲流水

ごきげんよう

令和元年のフットボール

タイトルに深い意味はない。大江健三郎の小説とはまったくの無関係。


ここ1,2週間は京都アニメーション放火事件を受けてTwitterの非公開サブアカウントに籠っていた。悲しみや弔意を示すツイートよりも、根も葉もない流言飛語の他、憎悪や敵意にまみれたツイートがTLに流れてくるのが堪えられなかった。

それはさておき、その間面白い本を何冊か読んだので取り上げてみたい。順番は順不同。

三体

三体
オバマ前大統領やFacebookザッカーバーグも愛した中華SF。文化大革命からVR隆盛期たる現代を股にかけた壮大な作風。過去のSFの名作の要素を匂わせつつ、読み応えのある傑作になっており、高度にバランスが取れた充実ぶりを誇るのが本作『三体』である。

VR世界の3つの太陽の運行法則の謎を解明すべく、ニュートンフォン・ノイマンの力を借りて人列コンピュータを作り、始皇帝の御前で解析してみせる、と書くと何が何だか皆目見当がつかないが、本作はこういうことをやってのけてしまう。この一文にピンと来たら読んでみるべし。とにかくスゴい。『幼年期の終り』とか『星を継ぐもの』とか好きなら相性がいいかも。

余談。2巻では『銀河英雄伝説』のヤン・ウェンリーのセリフを引用する人物が登場するらしく、楽しみ。

処刑少女の生きる道

処刑少女の生きる道(バージンロード) ―そして、彼女は甦る― (GA文庫)
女女感情を真摯に追求しようという姿勢が可視化されており、大変よろしい。さすがは7年ぶりのGA文庫大賞受賞作にふさわしいクオリティである。百合ラノベの新星と目されていただけのことはあった。

「女主人公ラノベや百合ラノベは売れない」というジンクスがまことしやかに囁かれ、結局男主人公の方が売れるという空気が漂うライトノベル業界。本作のGA文庫大賞受賞の勢いに乗じてそのジンクスを過去のものにしたい。

肝心の内容。アカリのメノウを翻弄する能天気系魔性の女ぶりと、メノウの後輩モモの崇拝・依存型ヤンデレぶりには目を瞠るものがあった。ファム・ファタールが2人も同時に。メノウが女女巨大感情の特異点となりつつある。9月に早くも2巻が出るのが待ち遠しい。

最強の傭兵少女の学園生活

最強の傭兵少女の学園生活 ―少女と少女、邂逅する― (ダッシュエックス文庫)
小説家になろう」発のライトノベル。ファンタジーものと学園ものの両立がコンセプトらしい。最強の傭兵に育てられたシエラと、王位継承権を持つゆえに暗殺者に狙われるアルナがメインキャラ。

やっぱりと言うべきか、どうしても惹きつけられてしまったのが百合展開である。世間知らずを通り越して幼さすら感じさせる素直なシエラに対して、自分のせいで彼女が傷付くのを見かねたアルナが絶縁を宣言するも、結局シエラがアルナを間一髪危機から救う、という展開はシンプルであるだけになかなかの最大瞬間風速を叩き出してくれたと思う。

『処刑少女の生きる道』と並んで注目していきたい百合ラノベ

ヴァイオレット・エヴァーガーデン

KAエスマ文庫 ヴァイオレット・エヴァーガーデン 上巻
9月に劇場版上映を控えた京都アニメーションが送る人間ドラマ。孤児の少女兵だったヴァイオレット・エヴァーガーデンが、彼女の保護者だったがとある事情で行方が杳として知れなくなったギルベルト・ブーゲンビリア少佐を探し求める話。

幼少期を戦場で過ごしたゆえに世事に疎いヴァイオレットの人となりは、性別は異なるが京アニでアニメ化された『フルメタル・パニック!』の相良宗介を連想させる。そんな彼女は少佐の伝手で郵便屋に雇われ、タイプライターで手紙を代筆して届けるという第二の人生を歩むが、その中で今まで知ることのなかった「愛」を学ぶ。

文章の時点でとにかく美しい作品。この煌めきと祝福に満ちた世界観を映像でどのように表現したのか、刮目して見てみたい。

今日、小柴葵に会えたら。

今日、小柴葵に会えたら。 (1) (REXコミックス)

顔良すぎじゃない!?
それ以外の感想を紡ぐ語彙力を喪失した。フライ先生の繊細かつ端正でありながら躍動感のあるイラストの賜物だ。

正直、最初読んだ時も佐穂子と葵の顔が良すぎて内容が頭に入らなかった。思いがけないキスから始まり、意外な面を含めて相手のことを徐々に知っていくというストーリーは王道的なだけに、何となく安心感が持てる内容となっている。周囲の人間関係を含め、どこか往年の名作である森永みるくGIRL FRIENDS』を思い起こさせる。