行雲流水

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ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝 永遠と自動手記人形


変化しつつある時代背景

「永遠と自動手記人形」は小説版「外伝」にも収録されているストーリーで、戦争孤児同士で義理の姉妹となったエイミーとテイラーを中心とし、ヴァイオレットとベネディクトが間に立つエピソードを描く。京都アニメーションの美麗な作画と演出は今回も健在。

本編同様、20世紀前半のヨーロッパ的世界観の下繰り広げられる文学のような作品。時代背景はタイプライターが重宝され、空には複葉機が飛び、ガス灯が電灯に取って代わり、エレベーターが登場し始めている。そして家事だけでなく手に職をつけた職業婦人という新たな女性の人生の選択肢が社会的に定着しつつある時代背景の存在も見逃せない。

エイミー・バートレットは義妹テイラーと2人で暮らしていた。が、ある日ヨーク家の令嬢として実父を名乗る者に引き取られ、イザベラ・ヨークとして第二の人生を歩むことになる。ヴァイオレットは家庭教師兼侍女としてエイミーの名門への花嫁修行のための学園生活をサポートするため、寝食を共にする毎日を送る。

孤児院に引き取られたテイラーはヴァイオレットが代筆したイザベラの手紙を届けたベネディクトを伝手としてC.H.郵便社を訪れ、配達の仕事を始める。エイミーに再会できると信じて。

本作が描くのは戦後の移り変わり行く人と世界、そして離れ離れで暮らさざるを得なくなっても途切れない不滅の関係。名門の家の事情という不可抗力で引き離されることになったエイミーとテイラーだが、エイミーは自らを囮とすることでテイラーが職業婦人として将来を約束させることに成功する。

エイミーがイザベラを名乗るようになってからも一人称として「僕」を使い続けたのも、家父長制的な世界へのささやかな抵抗とも解釈できる。ヴァイオレットをはじめとした職業婦人の先輩たちのことを描きつつ、時代の変化を先取りする開明性を表現したのは見事だと思った。本作が初陣となる京都アニメーションの新鋭藤田春香監督にふさわしい作品だといえよう。

その他雑感

一人称が「僕」ということもあり、小説版だとエイミー(イザベラ)が男装の麗人っぽい印象だったけど、思いの外自分に自信のないキャラだったのはちょっと意外。むしろヴァイオレットの方が女学生の間で「騎士姫」とか呼ばれて凛々しい美貌を褒め称えられていたのが印象深い。

CV:寿美菜子キャラは田中あすか先輩や七海燈子先輩のような有能で顔が良くていろいろ多くのものを抱えた人物が多いという印象だけど、本作のエイミーはそれとはひと味違った。

それからヴァイオレットとベネディクトのファッションセンスが絶妙だった。特にベネディクトのヒール付きブーツと背中の見える服装はなかなか独創性があった。