疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

天気の子


晴れ女の正体

君の名は。』の空前の大ヒットで一世を風靡した新海誠監督の最新作。家出少年として単身東京で仕事を探す森嶋帆高と、半ば都市伝説と化した100%の晴れ女である天野陽菜のボーイミーツガール。

思ったより勢いと見応えがあったと思う。何と言っても光と水、そして新宿のビル街や打ち上げ花火を上空から眺めるシーンの映像美は息を呑むほど。

ストーリーについてはセカイ系という前評判があったが、ありがちなセカイ系作品は知っていてやむを得ず少女の生贄に捧げて世界の安寧を保っている印象があるのに対し、本作はそもそも生贄の存在に対する(大人の)無知や無関心が前提に存在していると思った。

主人公一味が銃刀法違反を筆頭に公務執行妨害や器物損壊、鉄道営業法違反犯罪などを犯す犯罪アニメ 晴れの巫女である天野陽菜という人柱の存在に対する無理解や無関心と鏡写しなのかもしれない。

思えば「HELLO WORLD」も一種のセカイ系なんだよなあ。こちらはタイトル通り「愛する人と世界の命運が共存できる新世界を創造する」というストーリーだったから、見終えた直後はセカイ系だという印象は希薄だった。

脱線したけど、「君の名は。」勢が友情出演したのは嬉しかった。あと黄前久美子の観察並みに女体描写がねっとりしていた。特に須賀さんと先輩こと凪くんはいいキャラだったなあ。

結末はいわゆるメリーバッドエンドかもしれない。陽菜は何とか無事だったけど、帆高は保護観察処分*1とされて故郷の式根島からは高校卒業まで出ることができず、なによりも東京が連日の豪雨により完全に水没するなど、手放しでは喜べないバッドエンドとしての要素も含んでいるからだ。

「プロメア」の時の松山ケンイチ氏や堺雅人氏もそうだったけど、最近のアニメ映画に出演する本業が声優以外のキャストのレベルが高いと感じる。須賀さん役の小栗旬氏はなかなかよかった。

*1:銃刀法違反他複数の罪状が挙がったことを考慮しても大甘な処分だとは思うが