疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

戦姫絶唱シンフォギア XV

過去記事はこちら。1-3期まとめての内容だが。

kamikami3594.hatenablog.com

歌いながら戦うアニメシリーズの集大成

戦姫絶唱シンフォギアXV』はシンフォギアシリーズ5期目にしてシリーズの掉尾を飾る最終作。今期も相変わらず情報量が過密で超展開が続くが、その分テンポがよくてスピード感があるのはいい。今回の敵方ノーブルレッドは自らを弱い、被害者だと位置付けているがゆえか、翼の眼前で無辜の一般人を惨殺するなど精神攻撃のような搦め手が多い印象。

4期AXZ最終話の展開からして風鳴のクソジジイが無原罪の未来を利用して何か企んでいる線は濃厚だし、ミラアルク絶対殺すウーマンと化した翼がメンタルをやられた挙げ句クソジジイに精神を掌握されているあたりに名状しがたいキナ臭さを感じた。

アニメシリーズ最終作ということもあり、1期から積み上げてきた要素や今までの登場人物オールスターで、そのリソースをほぼ出し切ったと言ってよい。個人的には3期のキャロルがオートスコアラーたちを従えて響と共闘することになった展開が嬉しい。シリーズを通して敵陣営の中で一番好きだったのがキャロルだったので。

最終13話で「xtream vibes」を7人で歌っている間に今までお世話になった方々が走馬灯のように現れたシーンが卒業式における卒業生合唱としか思えなかった。メタ的な意味では「戦姫絶唱シンフォギア」アニメシリーズの卒業式だったのかもしれない。

神様も知らないヒカリで歴史を創ろう

カットインだの戦闘曲だの情報の過密さだの超展開ぶりが度々取り沙汰されるシンフォギアシリーズだったが、主要なテーマである「相互理解」については誤魔化したりトンデモ理論武装したりせず、真摯に向き合っていたところはシリーズ最大の美点だったと思う。人は弱いし過つものだし必ずしも理解し合えるとは限らないけど、未来のために手を伸ばして解り合おうよ、という人が人と関係を構築する上で最も初歩的で本質的な要素を響と未来の二人の関係に投影させていたように感じた。

「私は未来を奪いたい!人助けなんかじゃなく、私のわがままで!」 本作13話より

「奪っていいよ、私の全部!だからひかりちゃんを全部私にちょうだい!」という『少女☆歌劇 レヴュー・スタァライト』 12話において自分の思うがままに自らが出演する歌劇の脚本を書き換えてしまった愛城華恋の名台詞に近しいこの響の台詞は、「人助け」という建前でなく、「奪う」という強引さを孕んでいる。本音を発露しつつ一旦は失った未来*1のために手を延べて抱擁する一連の展開は、立花響の物語としての集大成だったと思う。

何だかんだ言って響は世界と未来を天秤にかけて世界のために未来を諦めるような物分かりのいい主人公ではないし、未来のために世界を見捨てるようなセカイ系主人公でもない。「世界も未来も」が立花響のヒロイズムだと思う。そのような一種の横紙破りを可能にするだけの馬力を、彼女は本作の戦闘や相互理解を通じて培ってきた。

バラルの呪詛はバベルの塔崩壊により起こったbalal(混乱)によってそれまで同一の言語を使用していた人類が各々異なる言語を用いるようになった、という旧約聖書の記述が出典だと思われるが、それが雨降って地固まる式に人類を守った祝福とみなすというのはなんとも本作らしい。2期Gで響が神獣鏡の光線を浴びたことでガングニールの侵蝕が止まった展開を思い出すなど。呪詛と祝福は是れ表裏一体。

そして前掲の「xtream vibes」未来が響ら6人と輪になって合唱するという意味でも今までの曲とは一線を画している。ようやく彼女も響らと対等の、7人目の正真正銘のシンフォギア装者になったと思うと感動もひとしおだった。

というわけで最後の最後にで魅せてくれたシンフォギアのアニメシリーズ。今後の展開や如何に。

*1:このパラグラフ「未来」は「みらい」と「小日向未来(みく)」のダブルミーニングとお考えいただきたい