行雲流水

ごきげんよう

PSYCHO-PASS2

psycho-pass.com

WC?

今回の敵・鹿矛囲霧斗は用意周到な計画に基づき、"What Color?"とシステムそのものの存在意義を直截的に問うてきた感。前回の槙島聖護が理知的ではあるものの、場当たり的に人の意志や行動原理の方に多大な興味関心を寄せていた大きく異なる。同じシビュラシステムに認識されない敵でありながら対照的。4話の青柳監視官の追い詰め方といい、5話のスマホゲームのUIで軍事用ドローンを作動させるやり方といい、酒々井監視官を懐柔(というか洗脳)させるやり方といい、鹿矛囲の手口は抜け目がなく、かつおぞましい。

7話で鹿矛囲に対して手を打たないことで露呈したシビュラシステムのお役所仕事ぶり。1期で雑賀先生が引用したマックス・ウェーバーの言を思い出す。

「理想的な官僚とは、憤怒も不公平もなく、さらに憎しみも激情もなく、愛も熱狂もなく、ひたすら義務に従う人間のことである」PSYCHO-PASS19話より

ウェーバーの『職業としての政治』によると政治家に必要なのは、硬くて分厚い板を刳り抜くような意志の強さと情熱という具合に官僚に求められるものと真逆だから、最高の官僚は最低の政治家とも言える。

「全知全能なる者は存在しない。全能者が誰も持ち上げられない石を作り、持ち上げられなければ全能者ではないし、石を作れなくても全能者ではなくなるからだ」という全能者のパラドクス。「クレタ島人が『クレタ島人は嘘つきだ』と言った」の命題に近いものがある。シビュラはシビュラ自身を裁けるのか。完全であれば自身も裁きの対象となるはずで、不可能なら完全なシステムとは呼べない。1期の「完全な社会は完全を諦めることで成立する」という狡噛の台詞にも相通じる。

終盤の展開を約めて言い表すと、シビュラシステムの進化を問うといったところ。医療行為の末、複数の児童の身体を継ぎ接ぎする形で命を永らえてきた鹿矛囲をシステムの認識下に置くことで、例外を取り込み続けて完全性を保持し続けてきたシビュラはまた一つバージョンアップを成し遂げた。

「君の願う法の精神、もしそれが社会に等しく正義の天秤となるなら、あそこにいる怪物を本当の神様に変えるかもしれない」PSYCHO-PASS2 11話より

とは鹿矛囲がシビュラシステムが内側から在り方を変革される可能性を仄めかす台詞だが、ブラフのおそれがあり、今後の展開としてはあまり楽観視はできない。甘い罠かもしれないし。

一方でシビュラシステム体制下にあってもシビュラの色に染まり切らず、綱渡りのような交渉を続けつつシビュラとは異なる理論である法の支配の正統性を信じる朱。彼女は

「楽観だろうと選ばなければ実現しない。社会が人の未来を選ぶんじゃないわ。人が社会の未来を選ぶの」PSYCHO-PASS2 11話より

と語るが、内容が「Fate/Grand Order」2部3章とリンクする。あの作品の始皇帝の言を借りるなら、シビュラシステム下の民衆は「民」であるが「人」ではなく、朱が語る社会の住民は「民にして人たる者」だ。「FGO」の始皇帝に関しては前回記事のご参照あれ。

kamikami3594.hatenablog.com

登場人物雑感

常守朱。先にも書いたが彼女のバランス感覚は本物である。体制側である法の番人として働きながら、その法の正統性を盲信せず疑問を抱き続ける。その強靭な精神を素直に称賛したい。この世界でサイコパスが濁らずに済むだけで、ある意味超絶に恵まれているというのに。自分の中のリトル狡噛と対話するために煙草の煙を嗅いだ末、セラピストに受動喫煙は控えるよう忠告されるのはご愛嬌か。

また、2期からは1期の件があって以降の宜野座さんの変化ぶりに傾注してきた。朱の采配を疑問視する霜月監視官に向けた「理解を超えたものから目を逸らして否定するだけじゃ、いつか後悔することになる」という台詞は、過去を踏まえると重みが感じられる。征陸のとっつぁんの死を乗り越えると同時に、父親に似てきたか。

個人的に大いに注目したのは霜月美佳監視官である。ファンから未熟者で他のメンバーの足を引っ張る上に態度はでかい無能呼ばわりされるキャラだけど、そもそも嫌われ役として作られたキャラだし、公式の思惑通りに動くのも癪だから嫌わずにいておいた。いい歳こいた高圧的な無能上司大人とかならともかく、年齢的にも経験的にも未熟ということで済ましている。むしろ朱の方が有能すぎて人間味が薄いという見方すらできる。自分で言うのもなんだが、わたしは生意気で反抗的な後輩系キャラには比較的甘い。そんな彼女には既視感があったけど、その正体はガンダムSEED Destinyシン・アスカだった。ただし彼にとってアスランにあたるはずのポジションの人物が、霜月監視官にとっては常守朱というぐう有能なせいでシンほど同情されていない印象。