行雲流水

ごきげんよう

フラグタイム

フラグタイム 1 (Championタップ!)

フラグタイム 1 (Championタップ!)

佐藤達哉監督の劇場版アニメ「あさがおと加瀬さん」の記事はこちら
kamikami3594.hatenablog.com

制作会社にトラブルがあったそうだが、制作スタッフにはきちんと酬いてほしいところ。

「いっしょにいたい」とそう思えることが

3分間だけ時間を止めることができる少女と、時間停止が通用しない少女の関係を描く。時間を止めて2人だけで同じ時間を共有するというと、まるでJ-POPのラブソングの歌詞をそのまま切り出したかように響くが、それを(物理的に)具現化したかのような作品。「童貞みたい」と評される森谷美鈴の青臭さと、彼女をからかういたずら好きな年上彼女のような雰囲気を醸し出す村上遥のキャラが絶妙。

そして話が進行するにつれて本作はつまるところ、人の輪の中に加わることを拒み続けてきたために人とずれた時間を生きるようになった少女と、人の輪の中に入り続けているうちに自分自身を見失った少女の物語であることに気付く。社会への適応を拒絶したままでも、過剰に適応したままでも生きることは難しい。とはいえ、クラスメイトのプロフィールをほぼ完全に網羅する「努力」をはじめとした行為から垣間見える遥の人となりを美鈴が「好き」と評したことには感動を禁じ得なかった。

まだ知らない明日へと つながってゆくよ

劇場版ではさすがに村上さんの「童貞みたい」発言はなかった。でもわたしとしては、CV:宮本侑芽の「童貞みたい」を聴きたいという欲求がなかったわけではない。 小林さんいいキャラしてるし何気に森谷さんの成長のキーを握っていた人物だけど、高坂麗奈と同じ声帯の持ち主であることを同定できなかったのが不覚だった。

原作の森谷さんのコミュ障童貞系女子ぶりと村上さんの八方美人系女子ぶりを中の人の演技力で引き出しつつ、「あさがおと加瀬さん」の時にも発揮された佐藤卓哉監督の海と空と光を用いた2人の心理を視覚や聴覚に落とし込んだ巧みな演出で表現したのがexcellentだった。

主題歌がかのEvery Little Thingの「fragile」だったのは的確すぎるチョイスとしか思えない。加瀬さんの時はI WiSHの「明日への扉」だったが、J-POPの王道ラブソングを百合アニメに抜擢するのにはセンスがあると思った。