疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

子どもが減って何が悪いか!

子どもが減って何が悪いか! (ちくま新書)

子どもが減って何が悪いか! (ちくま新書)

普通否定的に捉えられる少子化の問題を肯定的に捉え、「少子高齢化に適応できる社会を目指すべき」と論じた本。タイトルは「機動戦士ガンダム」のブライト・ノアの「殴って何が悪いか!」のパロディらしい。

著者は「男女共同参画社会の実現」、「夫の家事分担」、「専業主婦優遇(配偶者控除)の廃止」、といった方策に少子化を食い止めることができないことをリサーチ・リテラシーの視点から説く。さらに、このような方策を嘘や捏造を用いてでも確信犯的に推進されていることもまた批判の的となっている。

著者の主張は首尾一貫している。その趣旨は子どもは産みたいと思って産むべきであり、この問題に行政が支援をするなら、周囲の大人ではなく子ども本人の利益に即するべきだというもの。そしてライフスタイルの選択の自由と世代間の負担(社会福祉費)の分配の問題をまず克服すべきであるということと同時に、少子高齢化が進むなら、それに適応できる社会を作るべき、と説く。

それから、私にとって反省すべきことがある。以前「女性の就業率と出生率が比例する」という言説を聞いたことがあるが、勉強不足の私はこれを鵜呑みにしてしまった。実際は比例するとは限らない。沖縄県島根県のように出生率が高い県では出生率が高めの傾向が出る第一次産業の就業率が高いため、相関関係があるように見えるだけであった。都市化が進んでいるか否かの違いだけである。

子どもは、子供を産み育てる覚悟がある人だけが産めばいいという意見には、新鮮なものを感じた。勉強になる良著だと思う。