日本人のしつけは衰退したか
- 作者: 広田照幸
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/04/15
- メディア: 新書
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世間を賑わす少年犯罪が起こるたびに、訳知り顔のコメンテーターたちは「昔は家庭のしつけが厳しく、こういう事件は起きなかった」、「最近の親は子のしつけに無関心」などとメディアで発言するが、そういった言説の虚を突くのが本書。
著者は明治時代など、主に戦前の史料をもとに、以下のような主張をする。
・旧来のしつけ観を残す山村地帯の家庭のほうがしつけを学校に依存する傾向が強いこと
→村でのしつけは目上の者への忍従・隷属。村の掟に従わない者は村八分という、封建的・排他的なもの。今では考えられない、人身売買もあった。
・親がしつけの主体となる傾向は、大正時代に入ってから見られるようになったこと
→学歴主義もこの頃から見られるように。
・「学校は要領だけ良くて自分の殻にこもりがちな子を作っている」という言説は戦前からあったこと
・「昔は良かった」という言葉には、誇張と歪曲が多い
→意図的にしろそうでないにしろ、現在の風潮をけなして抽象的な「昔」を賛美する傾向が昔から顕著です。例えば昔から頻繁に言われる「若者のモラル悪化」の言説も大抵は、具体性や実証性に欠ける年寄りのやっかみだと思う。
今流行りの「体罰をしなくなったから子供が調子に乗っている」論も信用できない。1879年の学校令で禁じられていたのに?昭和の戦争期や戦後間もない頃は頻繁に行われていたそうだけど。
以上のことから、結局、現在のほうが親の子に対する配慮が強くなっていると言える。幼い頃からの教育に熱心な傾向から、昔より子の将来を心配していることが分かるだろう。「しつけ」という言葉が頻繁に取り上げられることも、人々の子供への「しつけ」に対する関心の高さを物語っていると思う。