愛国者は信用できるか
- 作者: 鈴木邦男
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/05/19
- メディア: 新書
- 購入: 4人 クリック: 66回
- この商品を含むブログ (69件) を見る
愛国運動歴40年の著者が語る「愛国心」。
気になった点
・あの三島由紀夫は「愛国心」という言葉が嫌いだった。これは官製で押し付けがましく、国を単なる愛玩物に貶める言葉だったからだという
・そんな三島は押し付けがましくて現状維持を是とする「愛国」に代わって、「この国はこのままでいいのか?」と憂う革新的な「憂国」を旨とした。だからこそ自衛隊に決起を促そうとしたのであろう
・明治時代の右翼団体・玄洋社は孫文の中国国民党や朝鮮の東学党を支援したことがある。玄洋社は国家権力なくしては民衆の権利は守れないと考えた。
・改憲派の憲法学者である小林節は、改憲案に愛国心を盛り込もうとした自民党に対して「いかがなものか」と言ったら学者仲間にはぶられた。愛国心は自然に育つもののはずなのに、わざわざ国の最高法規である憲法にいちいち明記することか?
・内ゲバというと、右翼団体より左翼団体の方に多く見られる現象のように思うが、右翼団体内にもあったそうな。大体は玄洋社のような伝統的な派と、今のネット右翼と同じようなことを掲げる派の二つに分かれていたという
・日の丸、君が代を式で強制したら、日の丸と君が代がかわいそう
・ドイツ出身の医学者でお雇い外国人ベルツの『ベルツの日記』にはよく言えば謙虚、悪く言えば自虐的な日本人の姿が描かれている。彼は日本人以上に日本が好きだったそうな
私の愛国心に関する見解は、著者である鈴木氏にかなり近いものがある。愛国心があるからこそ、国民が一丸となって大業丕績を成し遂げることもあれば、とんでもない惨事を招いてしまうこともあるでしょう。鈴木氏の言う「愛国心は宝石にも凶器にもなる」というのはまさに至言。
福岡県では学校の通知表に「愛国心」という項目を導入した。日の丸を見て涙を流すほど感動したり、君が代を大声で歌うようなことをすれば愛国心があると見なされるのか。ましてや憲法に愛国心を盛り込む必要があるのか。
ちなみに私は日の丸のシンプルかつ鮮やかなデザインも君が代の厳かな雰囲気も大好き。小中高時代は校歌より君が代のほうを大きな声で歌った記憶がある。パフォーマンスでも何でもなく、自然的な感情に基づいた行動だった。学校と愛国心というと、自虐史観云々の問題になることが多いが、近現代史は授業日数の関係で深くは扱わなかったし、日本だけが特別悪く書かれているとは思えず。
今でも一部の、いわゆる「ネット右翼」は排他的で偏狭で軽薄なナショナリズムを掲げ、自分たちと同じ考えを持たない人間に「国賊」、「売国奴」のレッテルを貼り、罵る。愛国心という言葉も人によって定義が大きく変わるから何とも言えない部分もある。まあ、彼らは不安だからこそ偏狭なナショナリズムに走るのだろう。
海外から帰ってきたとき、懐かしい気分を感じると共に白いご飯や味噌汁を頂きたくなるだろう?野球やサッカーの国際試合では日本を応援するでしょう?それで十分愛国心と呼べると思う。