唐代の国際関係
- 作者: 石見清裕
- 出版社/メーカー: 山川出版社
- 発売日: 2009/05/01
- メディア: 単行本
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
唐王朝の国際性について論じた本。著者は私のお世話になった大学の恩師。
唐は日本、朝鮮諸国など東アジア、モンゴル、チベット、中央アジア、インド、イスラーム諸国などとの接触があるなど、国際的な世界帝国となったが、その背景に何があるのか、マクロの視点から解き明かしているのが本書。6~7世紀にはユーラシア大陸東部、8~9世紀にはイスラーム世界も含めた太平洋地域の政治的・経済的統合が起こった。
秦・漢両帝国は漢族中心だったが、後漢以降、五胡諸族が中国内地に移住したことにより変質する。北魏の時代には六鎮の乱が起き、突厥など新たな北族や中央アジアのソグド人、テュルク人の流入が見られた。唐に入っても、移住してきた民族に対しては減税や羊による納税といった優遇措置が採られた。
唐の成立過程は、
(1)六鎮の乱と東・西魏並立によって華北防衛体制が崩壊して、
(2)それが突厥の圧力南下につながり、
(3)隋の中国統一によって一次は形勢が逆転したものの、
(4)隋末の乱でふたたび突厥が優位に立ち、
(5)やがて突厥と唐の全面戦争になって唐が勝利したという歴史
という説明がされている。これを踏まえると、唐の統一は中国統一というよりはむしろモンゴリア(モンゴル)南部と華北で形成される地帯の統一であるという性格を帯びている。
唐の高祖・李淵は隴西李氏(前漢に李広、南北朝時代に李暠を輩出した漢人の名族)の出身であることを主張しているが、実際は鮮卑の大野氏の出身と言われいることも思い出した。