疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

自省録

自省録 (岩波文庫)

自省録 (岩波文庫)

古代ローマ帝国五賢帝最後の一人で「哲人皇帝」と呼ばれるマルクス・アウレリウスアントニウスが自分の言動を省察して綴った哲学書。

この本が語る話題は多岐にわたるが、気になったことを二つに大別すると、「理性に従い、生死や他人の言動、宇宙の法則など、自らの力で変えられないものに執着しない」ことと「今現在取り組むべきことに意識を向ける」ことであると思った。 本邦風に言えば前者は「人事を尽くして天命を待つ」、後者は「断じて行えば鬼神も之を避く」といったところか。

前者は「公益を目的とするものでないかぎり、他人に関する思いで君の余生を消耗させてしまうな」(第二巻)、「なによりもまず、いらいらするな。なぜならすべては宇宙の自然に従っているのだ」(第八巻)、「あらゆることにおいて理性に従がう者は、悠然とかまえていながら同時に活動的であり、快活でありながら同時に落ち着いているものである」といった言葉が当てはまる。

後者は「突然ひとに『今君はなにを考えているのか』と尋ねられても、即座に正直にこれこれと答えることができるような、そんなことのみ考えるよう自分を習慣づけなくてはならない」(第三巻)、「『現在やっていることをよくやること』で足りるのである」(第六巻)、「第一に、何事もでたらめに、目的なしにやってはならない。第二に、公益以外の何ものをも行動の目的としてはならない」(第十二巻)などが該当する。

マルクス・アウレリウスは「ストイック」の語源となったストア派に分類される哲学者です。自分の言動や思考を突き詰めてクリアにしていく過程に、人柄の実直さと誠実さ、ストイックさが偲ばれる一冊。そのためか、この本はあくまでも「自省録」なのに語りかけるような文体だった。私もこの本を座右の書として言動を振り返ってみる必要があるようだ。