疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

太歳と肉霊芝(肉芝)

さっき「世界の果てまでイッテQ!」で「太歳」なる謎の物体が紹介されていた。それがきっかけで久々に意欲が湧いたので更新してみる。


どうやらこれは、肉霊芝(肉芝。以降肉芝と表記)*1という、不老長寿の薬とされていたものらしい。ご存知仙人になるためのガイドブックとして有名な『抱朴子』には以下の記述がある。

五芝者,有石芝,有木芝,有草芝,有肉芝,有菌芝,各有百許種也。(中略)
肉芝者,謂萬歳蟾蜍,頭上有角,頷下有丹書八字再重,以五月五日日中時取之,陰乾百日,以其左足畫地,即為流水,帶其左手於身,辟五兵,若敵人射己者,弓弩矢皆反還自向也。千歳蝙蝠,色白如雪,集則倒縣,腦重故也。此二物得而陰乾末服之,令人壽四萬歳。千歳靈龜,五色具焉,其雄額上兩骨起似角,以羊血浴之,乃剔取其甲,火炙搗服方寸匕,日三,盡一具,壽千歳。行山中,見小人乘車馬,長七八寸者,肉芝也,捉取服之即仙矣。風生獸似貂,青色,大如狸,生於南海大林中,張網取之,積薪數車以燒之,薪盡而此獸在灰中不然,其毛不焦,斫刺不入,打之如皮囊,以鐵鎚鍛其頭數十下乃死,死而張其口以向風,須臾便活而起走,以石上菖蒲塞其鼻即死。取其腦以和菊花服之,盡十斤,得五百歳也。又千歳燕,其窠戸北向,其色多白而尾掘,取陰乾,末服一頭五百歳。凡此又百二十種,此皆肉芝也。『抱朴子』卷十一

1万年生きた八の字形の角のある蟾蜍(ヒキガエル)、千年生きた脳の重さで前のめりの白い蝙蝠(コウモリ)、千年生きた五色の霊亀、風生獣という貂に似て青くて狸ほどの大きさの生き物だとか謎の生物が多い。さすが四本足なら机と椅子以外は何でも、空を飛ぶものなら飛行機以外なら何でも、水の中なら潜水艦以外なら何でも食材にしてしまう国だぜ!

確かにこんなに珍妙なものを食ったら仙人になれそうな気がする。でも、肉芝は文字通り動物の肉ばかり。さっき太歳は変形菌らしいと言ったけど、やっぱり菌芝の方が太歳に近いのかな。昔のエロい偉い人は太歳の正体が菌であることを突き止めていたんだきっと!

で、肝腎の菌芝は次のように解説されている。

菌芝,或生深山之中,或生大木之下,或生泉之側,其狀或如宮室,或如車馬,或如龍虎,或如人形,或如飛鳥,五色無常,亦百二十種,自有圖也。皆當禹歩往採取之,刻以骨刀,陰乾末服方寸匕,令人昇仙,中者數千歳,下者千歳也。欲求芝草,入名山,必以三月九月,此山開出神藥之月也,勿以山佷日,必以天輔時,三奇會尤佳。出三奇吉門到山,須六陰之日,明堂之時,帶靈寶符,牽白犬,抱白雞,以白鹽一鬥,及開山符檄,著大石上,執呉唐草一把以入山,山神喜,必得芝也。又采芝及服芝,欲得王相專和之日,支幹上下相生為佳。此諸芝名山多有之,但凡庸道士,心不專精,行穢紱薄,又不曉入山之術,雖得其圖,不知其状,亦終不能得也。山無大小,皆有鬼神,其鬼神不以芝與人,人則雖踐之,不可見也。 同上

ここを読むと菌芝の方が「太歳」に近いことがわかる。山の中から採れる*2もんね。形は宮殿にも、車馬にも、龍虎にも、人にも、飛ぶ鳥にも見えないし、色が捉えにくいわけでもなかったし。

採取するときに禹の歩き方を真似するとか… 五石散とか「禹歩舜趨」*3という四字熟語を思い出す。手に入れにくさから考えて、やっぱり効果覿面。仙人になれます。何千年も生きられます。

一般的には「太歳」は肉芝のことだと言われるが、『抱朴子』を読む限り、やはり菌芝の方が近いようだ。

ちなみに始皇帝が求めたということについては、

盧生説始皇曰:「臣等求芝奇藥仙者常弗遇,類物有害之者。(後略)」 『史記』卷六秦始皇本紀

ぐらいのことしかわからなかった。

うーん、肉芝に菌芝か。「もやしもん」あたりで扱わないのかしら。この話題。恰好の題材だと思うけど。

何だか支離滅裂な内容だけど勘弁してやってください。リハビリということで大目に。

*1:Wikipediaの「変形菌」のページ参照。手抜きで申し訳ない。

*2:ちゃんと今でも漢方薬としても販売されている。

*3:偉い人の上っ面だけ真似しても虚しいだけですよ。という意味。