疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

代表的日本人

代表的日本人 (岩波文庫)

代表的日本人 (岩波文庫)

元々は不敬事件で教職を追われた内村鑑三が、西郷隆盛上杉鷹山二宮尊徳中江藤樹日蓮の5人を「代表的日本人」として英語で紹介した本。

敬虔なるクリスチャンだった著者らしく、進歩性と開明性というキリスト教陽明学の共通点に言及していた点が興味深い。また、「経世済民」の言葉通り、経済と道徳を分けて考えない日本らしい考え方が強調されていた点に、国際社会の中で日本人がどう生きるべきか、という内村の問題意識が滲み出ていた。

西郷どんについては、実務家というよりも人望とカリスマ性で人心をまとめたという点で、明治維新には不可欠な人傑であったことを確認。朴訥で実直かつ、命も要らず、名も要らず、位も要らず、金も要らず、という人は人生の困難さを共にできる人であり、国家に偉大な貢献をできる人。

上杉鷹山二宮尊徳は本当に「聖人」としか表現のしようがないように思った。日蓮についてあまりいい印象を持たなかったが、勇敢さ、誠実さ、不屈さ、創造性を併せ持った独立不羈の人だったんだなあ、と考えを改めることに。「闘争好きを除いた日蓮。これが私どもの理想とする宗教者であります。」という意見には納得した。

 というわけで、この5人はいずれも現実の困難に遭っても、それを乗り越えてきた偉大なる人である、という印象を受けた。