疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

ペルソナ3ポータブル

以前更新したものの転用。拙ブログのレビューは原則ネタバレ注意なのでご了承ください。

ペルソナ3ポータブル

ペルソナ3ポータブル

―一言で言えばブリリアント(美鶴先輩風)
総合評価:9/10(以下、10段階評価)

【概要】
アトラス社のRPG真・女神転生」シリーズの外伝として出発した「ペルソナ」シリーズの3作目(PS2)のPSP移植版。単なる移植ではなく、女性主人公の登場や新難易度の追加といったリメイクもなされている。

主人公は「港区」の月光館学園高等部に転入した高校生。両親を10年前の謎の事故で喪っていた主人公は、学生寮に入寮することになるが、そこで知り合った「特別課外活動部」の仲間たちと共に、学生生活と並行して、人の精神を食らって無気力に陥れる"シャドウ"なる存在と戦うことになる。因みに原作は未プレイ。

【設定:9】
ジュブナイルRPGということで、高校生活を営みながら 学校の人に限らず、知り合った人々と絆を深めていくことで、戦闘に不可欠な新たな力を獲得していくというシステムは新鮮で面白かった。

主人公たちが用いる「ペルソナ」とは「もう一人の自分」のことで、『ジョジョの奇妙な冒険』のスタンドのように戦闘時に召喚する。スサノオオーディンジークフリード、コウリュウ(黄龍)など古今東西多種多様な神話、伝説に登場する神、英雄、精霊、悪魔やマサカド、カエサルのように神格化された実在人物までペルソナとして登場する。

【ストーリー:9】
テーマは「死」。その重大なテーマに沿うように 主人公をはじめ、特別課外活動部のメンバーは例外なく身近な人の死を経験している(若しくは劇中で経験する)。それを乗り越えて成長、新たな力を身に付けていくというストーリーは、ベタながらもプレイヤーの感動を誘う。全体的に伏線の張り方が絶妙で、回収し忘れもないので、完成度の高い緻密な脚本と言える。

そして、立ち向かう相手は全ての生命に滅びをもたらす存在。その力は絶対的で、人間の力では抗えないという無力感に苛まれながらも、仲間と培ってきた団結力で戦うことを決意するが… ストーリーは最後まで目が離せない。でも主人公不憫すぎるよなあ…。文字通りの人身御供。

一方で現代社会の閉塞感も描く。シャドウの影響で生ける屍の如く無気力に陥った人々が増える不安に付け込み、「復讐」、「救い」と称して煽動する者も登場する。このあたり、ペルソナ4のテーマである「真実」、もっと言うと「辛くても真実を知る方と、自分が見聞きしたいものだけを見聞きする方のどちらが良いか」と通じるものがある。

また、ペルソナとはあくまで「もう一人の自分」なので、そのペルソナの出展について知ると気づくこともある。詳しく話すとネタバレになるから控えるけど。

【音響:10】
これは異論なしの最高水準。季節感のある学校や街中のBGMに、賑やかなものから静かながらも物々しい戦闘BGMなど、多めにボーカルを取り入れた洒落っ気のある楽曲たちがゲーム世界を彩ってくれる。
 
声優に関しては、豪華で演技も良かった。特に伊織順平役の鳥海浩輔、真田明彦役の緑川光、桐条美鶴役の田中理恵、チドリとエリザベス両役の沢城みゆき各氏の演技が特に光っていた。

【キャラ:9】
このシリーズの特色なのか、現実に存在しそうな、いわゆる普通の少年少女が多い点に共感した。順平とか岳羽ゆかりとか。いかにも漫画やゲームによくいる超人的なキャラやオタク受けを狙ったようなキャラはそれほどいない。まあ、部結成時からのメンバーである桐条美鶴、真田明彦はまさに超高校級の人材だが… 

【映像:5】
この作品唯一とも言える欠点かもしれない。PS2版と異なり、随所のムービーがカットされ、移動シーンや人との絆を深める「コミュニティ」のシーンが背景とキャラの一枚絵のみになったため、RPG要素がなければ、単なる「ギャルゲー」的作品になってしまった。

尤も、PSP版でPS2版を再現したら、重くなってロード時間など長くなって仕方なかっただろうが。

【バトル:8】
他のRPGとの大きな相違点は弱点のシステム。敵の弱点を突いたり、クリティカル攻撃を食らわしたりすると、的をダウンさせて連続攻撃を行うことができる。さらに敵全員をダウンさせると総攻撃によって敵全体に大ダメージを与えられる。こちらも同じ条件なので、毎回のバトルに緊迫感があった。

バトルの難易度は5段階あり、初プレイ時に選択できる。私はちょうど中間のノーマルを択んだが、これで丁度良いぐらいだった。最初はレベルが上がりにくいと感じたが、緊急時を除いて敵から基本的に逃げないプレイを続けていれば、ラスボス戦までレベル不足に苦しむことはなかった。

ラスボス戦は1時間半ぐらいかかった。長かったが、やり応えはあったし、演出を含めて製作者の熱意の伝わる作品だった。