疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

憲法と平和を問いなおす

憲法と平和を問いなおす (ちくま新書)

憲法と平和を問いなおす (ちくま新書)

「そもそもなぜ憲法が成立したのか」、「なぜ憲法が必要なのか」といったことを問う「立憲主義」という立場から憲法について論じた本。著者は、外国勢力に対抗するため、改憲を声高に主張するタカ派の言説にも、9条を金科玉条とするハト派の言説にも欠けているのが「立憲主義」だと述べる。

立憲主義とは国家権力を憲法によって制御することで、国民の多様な価値観を擁護するという考え方。その精神を簡潔に述べるなら、「価値観や世界観の多元化した社会で、国家権力の暴走から国民(の権利)を守る」ということになる。立憲主義は国民に義務を課するものではなく、国家権力の害から国民を擁護するという精神である。国民を規制するのは個別の法案でしかない。

他に日本のタカ派ハト派に共通しているのは「平和ボケ」なのではないかと思った。タカ派は外国が大挙して日本を攻撃・侵略しようとしている、と言うし、ハト派は「9条があるからミサイルが日本に飛んでこない」とか「改憲=戦争のできる国づくり」と言うし。この辺は本書とあまり関係なので割愛。

憲法は国家権力の暴走から国民を守る」とする立憲主義という立場は、憲法について論じる場合には必要不可欠なのだろうが、欧米と違い、市民革命によって時の権力者から自由や人権を勝ち取ってきたわけでもない日本にはなかなか根付かないかもしれない、と思った。