疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

ボトルネック

ボトルネック (新潮文庫)

ボトルネック (新潮文庫)



古典部シリーズ以外の米澤作品は初めて。東尋坊で転落死した恋人・諏訪ノゾミを弔うため、同地を訪れた嵯峨野リョウ。彼も転落したと思ったら、いつの間にかパラレルワールドにいた。その世界は自分が生まれなかった世界で、代わりに姉のサキが生きている世界だった。

自分が生まれた世界よりも、生まれなかった世界の方が上手く行っているという、何だかとても切なく、やりきれないストーリー。リョウの事故死したはずの兄が生きている、両親の仲が良くなっている、といった光景を目の当たりにしてそんな印象を受けた。ノゾミの従妹のフミカは怖い。

そしてリョウは自らを「ボトルネック」=瓶の口が狭くなっているように、物事の進行を妨げる要素、だと思い込む。いや、ボトルネックは瓶にとっては重要なパーツの一つだろ、と読んでいて突っ込んでしまったのは自分だけではないはず。悪くはなかったが、もやもやした読後感が残った。何だか、こういう掴み所のない小説は少し苦手かな。人物の心理の掘り下げは巧かったと思うけど。