疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

20151003_海老名市立中央図書館

本日は10/1にリニューアルオープンした海老名市立中央図書館を訪問。TSUTAYAを経営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と図書館流通センター(TRC)が指定管理者となったことで話題の図書館。こうした試みは佐賀県武雄市の図書館に続く二例目だそうな。

図書館危機


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斬新なカテゴライズ。日本十進数分類(NDC)なんて目じゃないぜ!何それおいしいの?

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階下は蔦屋書店になっている。表示を見れば一応わかるけど、商品の棚と蔵書の棚が隣接と言っていいほど近い距離にあるから、このへんどうも戸惑いがち。

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元々プラネタリウムのドームがあった構造を利用した書架。なんとなくファンタジー世界の図書館にありそう。この棚は一面料理関係の本だけど、多すぎる。料理本の蔵書が多いのは結構なことだけど、偏りすぎでは。さてはCCCが不要になった料理本を売りつけたな!?

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奥に見えるは併設されたスターバックス。そのおかげで、飲食可能な読書スペースが館内の随所にある。意識高い系(笑)やカップルのたまり場になりそうな悪寒。普段図書館を利用しそうにない人に足を運ばせるという意味では一概に否定できないが…。

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本日の目玉はこれ。

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地下1階の文庫本コーナーのドストエフスキーの一連の小説と、2階の国別に陳列された旅行本の棚になぜかぽつねんと佇む新潮文庫版『カラマーゾフの兄弟』。そうか、カラ兄は旅行記だったのか!オイラまた一つ賢くなったぞ!

戯れはさておき、こうした点にCCCの図書館運営のノウハウの未熟さを窺える。おそらくロシア旅行の前にロシアの文学を知ってほしい、と利用者に勧めるつもりでこのようにカテゴライズしたとは思うが、それならばなぜ新潮文庫版『カラマーゾフの兄弟』だけ「旅行」の棚に配置したのかがよくわからない。あるいはamazonの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」のアルゴリズムと同じようなものか。

とりあえず、そういうワンストップサービスのような試みは公共施設たる図書館ではなく、同系列の蔦屋書店か、あるいはヴィレッジヴァンガードのような書店でやってほしい。

多分このような粗は探せばいくらでもあると思うが、気になったものをもう一例挙げてみる。

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1階の「経済」の棚にある2008年度版、2009年度版の『原子力年鑑』と、2階の「自然科学」の棚にある2013年度版の『原子力年鑑』。ここでも2つに分かれてしまっているミステリー。確かに原子力は自然科学の領域の概念だし、経済との関係も密接な分野ではあるが…。08~09年と13年の間の原子力に関する話題といえば、

もしかして:福島第一原子力発電所事故

下種の勘繰りはここまで。さすがにちょっとこれは雑なんじゃないですかね…。



で、ここまでほとんど批判ばかりだったので、最後にフォローをば。

私は海老名市立中央図書館の試みを、新自由主義の象徴だとか行政と民間企業の癒着だとか言って糾弾するつもりはない。図書館と書店やカフェを一体化した施設、というコンセプト自体を否定するつもりもない。なので、ここはひとつ、紀伊国屋書店有隣堂丸善といった図書館の指定管理者としての実績のある書店を見習ってほしいと思う。あと、どこを探してもなかった中公新書の『星亨』を見つけられたことは嬉しかった。