疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

20161016_佐倉

10月16日に千葉県佐倉市に行ってきたという報告。主な目的は京成佐倉駅を最寄りとする国立歴史民俗博物館への見学。歴史愛好家にとっては憧れの場所。

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国立歴史民俗博物館

国立歴史民俗博物館(歴博)は国立というだけあって、規模も大きく、展示物にも大層力が入っていた。一部を除いて撮影も可能。歴博がその原型を留めているうちはわが国の学術研究や文化も安泰、なはず。

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昔の書物の出版に興味があったので撮ってみた。西洋で宗教改革活版印刷など出版技術の躍進に繋がったが、日本の初期の出版も仏教との関係が深く、事情は近いようだ。

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北条氏にまつわる行政文書や楽市令の立札が。北条氏は北条氏綱が当時としては先進的な文書行政システムを導入して以降、その国力を蓄えたと言うが、ここ下総の地まで進出したんだなあ、としみじみ思う。(違

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近現代の展示室は撮影禁止の表示が多かったが、面白そうなのを一つ写真に収めた。石巻ハリストス正教会の模型。東北地方の文明開化はまず函館に伝わった正教会を経由して伝播したという。そのため、宮城県をはじめ東北地方には今でも正教会の建物が多い。3月に行った白河にも白河ハリストス正教会はある。時間の制約上見学できなかったが。

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最後の第6展示室は、20世紀以降の戦争に関するものという展示物の性質ゆえか、英中韓と外国語の解説が充実していた。地元佐倉城址に設置された第57連隊関連の展示(ジオラマ、令状、小銃、軍歌)が興味深かった。

売店には日本史関係の書籍が販売されており、都内などにある大型の書店でないとなかなか買えないような書籍も多かった。というわけで私も3冊購入。あくまでも純粋に学習用や学術的な内容の書籍が中心で、昨今の書店でしばしば見かけるようないたずらに過激な惹句で人を煽るプロパガンダじみたものがないのも特徴だった。国立の博物館という性質上、そのあたりのバランスには高度の配慮が必要だ。そういうのは遊就館南京大虐殺紀念館でやろうね。

古代をテーマにした第1展示室がリニューアル中で閉室していたのは残念。また来なきゃ。

佐倉城

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歴博はこの佐倉城址公園にある。現在城跡として残る佐倉城は江戸時代初期、後に老中を務めた土井利勝が築いた、石垣を用いない土造りが特徴の佐倉藩11万石の城。江戸の東方に鎮座する要の城でもあった。佐倉藩は領主の家が幾度も変わったが、蘭学に熱心な藩として知られ「西の長崎、東の佐倉」と並び称され、江戸時代を通じて合計9人の老中を輩出した。これは同じく江戸に近い川越藩が輩出した7人を超え、諸藩の中でも最多である。現存する川越城御殿もなかなか立派だったけどね。

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保存状態が良好な馬出空堀。単なる溝に見えるけど立派な防御施設です。

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ちなみにこちらが水堀。お堀といったら多くの人が水堀をイメージするのでは。

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公園内には茶室「三逕亭」も。一度はこういうところにも寄ってみたいけど、ちょっと敷居が高い。

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本丸や天守の跡地。小高い丘の上にあり、天気のいい日には富士山や東京スカイツリーも見えるらしい。

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堀田正睦とタウンゼント・ハリスの銅像堀田正睦佐倉藩主であり、幕末に老中を務め、老中及び大老に就任するまで井伊直弼安政の五カ国条約締結に向けた交渉にあたった。その正睦の交渉相手となったのがアメリカ公使ハリスである。というわけで二人の銅像は道を挟んで門番のように並んで立っている。

佐倉の秋祭りと佐倉市街地

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歴史ある城下町というだけあってか、市街地に佐倉市の特徴。

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観光に力を入れ、最近観光客が増えている川越ほどではないものの、古民家が多く、味わい深い街並みである。川越の方は観光客のためにおめかししている印象があったが、佐倉の方が建物が地元の人の生活に密着しているような感じがあって、その点はよかった。

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本日は「佐倉の秋祭り」の日の最終日で、佐倉の秋祭りの様子。威勢のいい掛け声と共に山車や神輿が街中を所狭しと駆け回る光景には迫力があった。これも川越まつりに通じる。ちなみに1枚目と2枚目の山車に乗っているのは、三国志でおなじみ、世界各地の関帝廟に祀られているヒゲ関羽である。

文化財となった建築物

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明治時代に建てられた重要文化財の堀田邸。前出の堀田正睦の子息で最後の佐倉藩堀田正倫の邸宅だった。均斉の取れた質実剛健で実用的な雰囲気の住宅という印象。

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千葉県立佐倉高校の敷地内にある記念館。記念館は堀田正倫の寄贈によって明治末期に建てられた文化財で、現在も学校の施設として現役である。佐倉高校は藩校以来の歴史を含めれば千葉県最古の名門高校で、浅井忠、長嶋茂雄藤木直人といった著名人を輩出している。

今度は寄りそびれた武家屋敷にも寄ってみたい。