ブレイブウィッチーズ
先日記事を書いた「響け!ユーフォニアム2」に続いて放送が終了したことによるロスが恐ろしい作品。
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2017/02/24
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (4件) を見る
ストライクウィッチーズの記事はこちら
kamikami3594.hatenablog.com
ストライクウィッチーズ2の記事はこちら
kamikami3594.hatenablog.com
戦いたければ強くなれ
本作は第501統合戦闘航空団の戦いを描いた「ストライクウィッチーズ」の姉妹作で、501に続く第502統合戦闘航空団「ブレイブウィッチーズ」と、502に加入した新人ウィッチである雁淵ひかりの戦いを描いた物語である。舞台は北欧のペテルブルク近辺であり、時系列的には「スト魔女」1期と2期の間にあたる。
著名なエースとして知られる孝美を姉に持つ佐世保の海軍訓練生のひかりは、孝美と共にネウロイとの戦いの最前線である北欧に派遣される。ところが502に配属される予定だった孝美がネウロイの攻撃を受けて重傷を負ったことで、ひかりが代わって502に配属されることになる。戦闘隊長のサーシャや教育担当のロスマンからは「戦力としてはゼロ」「魔法力に欠ける」など辛辣な戦力外通告を受け、一時は扶桑に送り返されかけるも、人並外れた努力と根性でロスマンの課した試練を乗り越え、502の一員として認められることになる。
ここまで見ると、本作の雁淵ひかりと「スト魔女」の宮藤芳佳、二人の主人公は大きく異なったキャラクターであることがわかる。明るく前向きな性格で、実戦経験のない扶桑海軍の新米軍人という点では共通しているが、その置かれた立場や能力という意味では対照的である。宮藤は一般の学生であるものの、絶大な治癒魔法力を持ち、父親を経由して縁のある坂本美緒によって軍にスカウトされてウィッチになった身である。そのため最初は厭戦感情は強く、戦うことを決意するまでに時間を要した。ひかりはその逆で、「やる気と根性は人一倍」と称される戦意と日々走ることで培ってきた、軍人である先輩ウィッチの管野やニパを上回る体力はあるものの、決定的に魔法力を欠くために、それを努力と工夫でカバーして戦っている。細かいことを言うと、事前に使用を禁じられていたひかりの固有魔法「接触魔眼」を、窮地に陥った仲間を救うために使用の許可を隊長のラルに仰ぐのはひかりらしいかも。宮藤だったら許可を得ず独断で使っていただろう。
話題が逸れたので戻そう。ひかりを含めた隊員から「先生」と慕われるロスマンは、ひかりに対し「お姉さんのようにはなれない」とたしなめつつもこう言っている。
「あなたは飛び続けるの、そしてあなたはあなたになりなさい」
4話より
というわけで、本作の主に前半のテーマはひかりがこの言葉を受けて、名実ともに502のメンバーになることである。そこに至るまではぶっきらぼうながらひかりを心配して発破をかける古き佳きツンデレの管野と、かつては自分より戦果を挙げていた同僚に劣等感を抱いており、立場的にも階級的にもひかりに一番立場の近いニパの存在は、ひかりが502に留まるために大きな役割を果たしていたように思う。
やってみなくちゃわからない
「スト魔女」を象徴する台詞は「わたしにできること」だったが、本作を象徴する台詞は「やってみなくちゃわからない」である。これはオープニングテーマの「アシタノツバサ」の中の歌詞*1にも、11話の副題にもなっている主人公雁淵ひかりを語るうえで避けては通れないものである。
次第に502の隊員みんなの妹的ポジションに収まり、各メンバーと共同生活を送るうち懇ろになったひかり。だが、物語も佳境に入ると、502もターニングポイントを迎える。孝美が3か月ぶりに戦線に復帰すると同時に、白海~ペテルブルクの領域を根城とするネウロイの巣グリゴーリを掃討する作戦の決行が総司令官のマンシュタイン元帥から告げられる。そのためにひかりと孝美のどちらが作戦に参加するかを決定するために、より正確かつ迅速にネウロイのコアの位置を特定するかを競うことになるが、孝美が勝ち、ひかりはカウハバへ転属となる。
見所はその後の展開である。ひかりはカウハバへの列車に乗る前に501のエイラとサーニャ*2に迎えられ、彼女らとカウハバに赴くことになるも、502がネウロイと交戦してピンチに陥ったことを知り、列車を飛び降りて姉たちの許に向かう。得意の長距離走をしつつ、佐世保で姉の前でやったように、魔法力を使って水上を駆け抜けて。また、孝美がグリゴーリのコアを撃ち抜くための魔導徹甲弾を真っ先に持ち上げにかかった時と、孝美が絶対魔眼を使おうとした際、互いに「お姉ちゃんならこうする」「ひかりならこうする」と考えが交錯するあたり、やはり姉妹だな、と思った次第。
ひかりが502の許にたどり着いた頃には、すでにグリゴーリを倒すための万策が尽きて万事休すの状態と思われていた。その中で散らばった魔導徹甲弾の破片を集めてグリゴーリに決戦に挑む502の各員。管野に先に餞別として贈られたグローブを彼女に返し、クルピンスキーから「お守り」として預かっていた拳銃リベレーターを携えて決戦へと赴く。一発の銃弾しか装填できないリベレーターが、まさかグリゴーリへのとどめを刺す一撃を放とうとは。魔法力を片手に集中させるロスマン先生の教えを忠実に守ったね!決戦を終えたひかりを抱きしめて「強くなったね」と言う孝美が、堰き止めていた感情を解き放ったようで、本当に嬉しそうだった。
キャラとしては主にロスマン先生やひかりが好みだが、ここではラル隊長について語っておきたい。クールで寡黙な姉御キャラでありつつも、7話でワライタケを食べて大爆笑するシュールなギャグ要員としての面があったのがいい。また、普段は古傷による腰痛により、前線には出ず事務処理に専念していたことでかえって大物感が出ていた。クルピンスキーの前で言った「お前が倒せないなら私が出るしかないだろう」と言って出張って、得意の偏差射撃でネウロイのコアを一撃で撃ち抜いたり、最終決戦目前で「一度きりの勝負だ。私はひかりに全部のチップを賭けよう。これは馬鹿しか賭けないギャンブルだがな」と一つ一つの言動が格好いい。ミーナ違う意味で有能な指揮官だ。大物っぽさは間違いなくラルの方が格上。
エンディング曲の「Little Wing」が1990年に出たLINDBURGのカバー曲だったことを後になって知る。曲の雰囲気が少し昔っぽく感じてたけど、歌詞がぴったりだったから気付かなかった。良くも悪くも本作と比較して突拍子がなくてヴィヴィッドな「スト魔女」と比べてどこか古風で実直な少年漫画的な毛色の本作に やはり本作は「萌え」よりも「燃え」寄りなのかもしれない。「ブレ魔女」が萌え<燃え で、「スト魔女」が萌え≒燃え。ミリタリー描写は「ブレ魔女」でも健在!
というわけで、2016年のアニメとしては「響け!ユーフォニアム2」と肩を並べる傑作アニメだった。