2018年11月の読書
11月の読書メーター
読んだ本の数:15
読んだページ数:2581
ナイス数:62
方丈記 (光文社古典新訳文庫)の感想
大災害や戦火で荒廃しつつある俗世を離れ、1丈四方の質素で草庵に居を得た著者による随筆。無常観を基底にしつつ、閑静な環境でこじんまりとした生活を送ろうとする方向性が示される。現代人になじみ深い単語だと「断捨離」「スローライフ」で表現できそう。
読了日:11月01日 著者:鴨 長明
彼女のくちづけ感染するリビドー総集編2(百合 A5版 164P)の感想
入院中に知り合った仲から急速に距離を縮める早奈と綾音。一見ベタ甘なバカップルに見えない2人なのにしつこさを感じないのは、2人の初々しさはもちろん、みっちゃんの存在のおかげと言っていいかも。百合漫画で今までいそうだが、なかなか貴重で存在しないタイプ。
読了日:11月03日 著者:寄田 みゆき
イヴとイヴ (百合姫コミックス)の感想
R-18ではないがエロあり。SF風味が強め。これが噂の百合妊娠か…(困惑)。二人でロケットで宇宙に飛び出し、脳味噌だけになっても関係を維持する「永遠一号二号」など、なかなか前衛的な作風。
読了日:11月08日 著者:長代 ルージュ
イスラームの「英雄」 サラディン――十字軍と戦った男 (講談社学術文庫)の感想
イラクのフセインやシリアの大アサド(アサド現大統領の父親)も心酔したという、十字軍とのエルサレムを巡る戦いで有名なクルド人の英雄・サラディンの評伝。軍政両面での雄才、信仰心の篤さ、西欧の人々からも「敵ながら天晴れ」と評される慈悲深さを以て語られる聖将という印象の強いサラディンだが、政治面での抜け目のなさなど、違った側面が本書から伝わってきた。史実ではどうだったかはともかく、一般的な評価は日本史における上杉謙信に近いと言ったところか。
読了日:11月10日 著者:佐藤 次高
歴史学の名著30 (ちくま新書)の感想
ヘロドトス、司馬遷、ランケ、トインビーのような定番どころの歴史家の著書はもちろんのこと、伊達千広(陸奥宗光の実父)やといったマイナーな人物や(本書を読むまで名前を知らなかっただけだが)、潘佩珠(ベトナムのフランスからの独立運動の主導者)やチャーチルといった学者が本業ではない人物の著作も多く、著者の博識ぶりと歴史学の裾野の広さを窺わせる内容。教科書的な日本史・世界史の知識の他、「歴史学」の素養がないと内容を咀嚼するのに骨が折れるかもしれない。
読了日:11月10日 著者:山内 昌之
百合の蕾が咲く頃に (BAVEL COMICS)の感想
どれも終始ラブラブ(死語)で優しい雰囲気の百合えっち。電子書籍版はおまけ付きで嬉しい仕上がり。
読了日:11月11日 著者:syou
政治学の名著30 (ちくま新書)の感想
プラトンから丸山眞男までの政治学の真髄を簡略に示す。アメリカ合衆国の連邦制や権力分立論の基礎となった『ザ・フェデラリスト』や、ハイエクやアレントがそれぞれ別の方向から全体主義の成立過程について詳細に考察していたことが興味深い。
読了日:11月12日 著者:佐々木 毅
経済学の名著30 (ちくま新書)の感想
他の名著30シリーズと比較すると各著書の取り上げる順番が時系列になっており、前後関係に注意が払われている印象。全体主義批判の文脈で共産主義に否定的だったハイエクも、政府による市場介入をある程度は認めていたようで、新自由主義の旗手であったフリードマンとは反りが合わず、逆に思想信条が正反対と思われるロールズに親和的だったなど、新たな気付きもあった。
読了日:11月15日 著者:松原 隆一郎
社会学の名著30 (ちくま新書)の感想
著者の読書経験談や小話が多く、難解な話題を扱いながらも読み口が軽快だったのが印象深い。ポール・ウィリスや上野千鶴子といった著者が存命中の著作も多く、社会学の間口の広さ、捉えどころのなさに思いを馳せた。個人的には、教えられ、学ばされる=学校化した社会に別れを告げる「脱学校」により「独学」の復権を主張するイリッチの『脱学校の社会』が気になった。
読了日:11月17日 著者:竹内 洋
方法序説 (岩波文庫)の感想
「わたしが検討する難問の一つ一つを、できるだけ多くの、しかも問題をよりよく解くために必要なだけの小部分に分解すること。」「自分の行動において、できる限り確固としてかだんであり、どんなに疑わしい意見でも、一度それと決めた以上は、極めて確実な意見であるときに劣らず一貫して従うことだった。」
このあたりは肝に銘じておきたい。
読了日:11月18日 著者:デカルト
宗教学の名著30 (ちくま新書)の感想
信仰を前提として教義の討究を図る神学と異なり、歴史学、文化人類学、社会学や心理学とも密接で、学問としてはまだ若い「宗教学」の名著の数々を解説。フィンガレットの『論語は問いかける』、バフチンの『ドストエフスキーの史学の諸問題』など、変わり種(?)の著書が多く、宗教学の幅広さと奥深さを感じた。他の名著30シリーズより内容が頭に残りにくかったが…。
読了日:11月20日 著者:島薗 進
私の百合はお仕事です! 4 (百合姫コミックス)の感想
純加と果乃子が晴れてシュヴェスターになる回。過去の経緯を踏まえると感慨深いものがある。
読了日:11月21日 著者:未幡
やがて君になる 佐伯沙弥香について (電撃文庫)の感想
小学生時代のスイミング教室でのファーストインパクトと、中学生時代の先輩とのセカンドインパクト。相手から向けらえる唐突な「好き」の暴威に戸惑い、これまた突然の破局と相手に振り回される感が強く、なんともほろ苦い。
読了日:11月23日 著者:入間 人間
その日、朱音は空を飛んだの感想
自殺を遂げた川崎朱音の死の真相を追求するスクールミステリ。優越感を競い合う猿山の猿同士の如きマウント合戦が巡り巡って生んだ悲劇だが、見事に誰一人として救われない展開だったので絶望感が今も拭えない。死することで相手に生涯癒えない心の傷を負わせる復讐劇、という筋書きはありがちだが、エピローグでそうは問屋が卸さない展開にしてしまった作者の(いい意味での)冷淡さが異彩を放っている。朱音と純佳の関係について、わかる人に一言で表現するなら「汚いのぞみぞ」。
読了日:11月25日 著者:武田 綾乃
暴政:20世紀の歴史に学ぶ20のレッスンの感想
トランプ政権やプーチン政権の強権的な支配に対して危機感を滲ませた歴史学者による警醒の書。フェイク・ニュースやオルタナティブ・ファクトが飛び交う中で精神を圧制者に委ねない20の提言を行う。ちょっとした言葉遣いに対する注意点や、ジャーナリズムを買い支えることで強権に対抗することを提示するなど、非常に実践的な内容。
読了日:11月26日 著者:ティモシー・スナイダー,Timothy Snyder
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