疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

2018年12月の読書

12月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:2071
ナイス数:59

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (13) (ガガガ文庫)やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (13) (ガガガ文庫)感想
難産であったと思うが、まずは続刊が世に出たことを祝したい。保護者会で否決されることを前提とした当て馬のプロムを提案して、本命のプロムを通そうという姑息な(褒め言葉)やり方が八幡らしくあると同時に、今までの集大成となっており、見応えがあった。初期次で最終巻だが、八幡たちが自分たちの物語にどのように決着をつけるかが見物だ。
読了日:12月05日 著者:渡 航
沙耶の唄 (星海社FICTIONS)沙耶の唄 (星海社FICTIONS)感想
「純愛」という下馬評は是れ真であった。事故により自分の認識する森羅万象がグロテスクに感じてしまうに至った青年と、クトゥルフ神話における「外なる神」的存在である少女による狂気の物語。冒瀆的で名状しがたい展開が続く中、耕司と凉子に追い詰められた沙耶が郁紀への純愛を貫き、愛の勝利を高らかに歌い上げるシーンには感極まった。自分の見聞きし感じる自我・主観が世界の総てである、という実存主義虚淵イズムを交えた精華が本作なんだな、というふうに解釈した。
読了日:12月15日 著者:大槻 涼樹,虚淵玄(Nitroplus)
文明の生態史観 (中公文庫 M 98)文明の生態史観 (中公文庫 M 98)感想
自らのアジア遍歴とトインビーの文明史観に触発された著者による論考。気候や環境といった地理的条件を切り口に第一地域と第二地域に区分して文明の起源に迫る、という当時としては画期的な主張が刺激的だった。
読了日:12月15日 著者:梅棹 忠夫
緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」感想
今年7月の国会会期末の枝野議員による安倍内閣への不信任を本旨とした演説を文字に起こした刊行物。私も数か月前まで漠然と「野党は対案を出さず内閣の批判ばかりしている」「反対するしか能がない」と思っていたことを反省。議院内閣制や立憲主義の趣旨をわかりやすく説く件は内閣や政党の支持不支持を問わず読む価値はある。
読了日:12月20日 著者:解説 上西 充子,解説 田中 信一郎
行進子犬に恋文を(2) (百合姫コミックス)行進子犬に恋文を(2) (百合姫コミックス)感想
今最も注目している百合漫画の1つ。島田フミカネ氏も推薦の作品。加賀美さんのご母堂や彼女と接点のある元ロシア兵のナタリアが登場するなど、ストーリーが次々と新たな局面を迎える。それにしても加賀美さんは優しいけど内面が複雑でわかりにくい人だと思う。
読了日:12月20日 著者:玉崎 たま
文字と組織の世界史:新しい「比較文明史」のスケッチ文字と組織の世界史:新しい「比較文明史」のスケッチ感想
世界史を意思伝達と記憶の手段である「文字」とあらゆる資源の動員を通じての目的達成の手段である「組織」という2つのファクターから世界史を捉え直す。内容は巷間に有り触れた世界史の概説書と重複する部分も多いが、組織の最たるものである政治・軍事体制や文化の比較優位が世界史の原動力となってきたこと、その組織の力の基礎として文字を位置付けるという視点が画期的だと思った。ラテン文字世界の統合=ローマ帝国=EUという見方は目から鱗。もしかしたら漢字世界の統合=大東亜共栄圏だろうか。
読了日:12月25日 著者:鈴木 董
ゼロ年代の想像力 (ハヤカワ文庫 JA ウ 3-1)ゼロ年代の想像力 (ハヤカワ文庫 JA ウ 3-1)感想
セカイ系=心理主義の90年代から、バトルロワイヤル=決断主義ゼロ年代という観点からゼロ年代の世相や漫画やアニメと言った作品について論説する。社会は自分を助けてくれないという諦観をベースに、何を決めるかよりも決めることそのものに重きを置く考え(=決断主義)を胸に荒んだ時代をサヴァイヴする、という考え方は「自己責任」という言葉の独り歩きと軌を一にしているのかな、とも思った。著者の見解とは異なる箇所もあったものの、論としては刺激的だった。
読了日:12月30日 著者:宇野 常寛

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