2019年1月の読書
1月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:1895
ナイス数:76
戦争の日本近現代史 (講談社現代新書)の感想
征韓論から太平洋戦争に至るまでの近代日本が「なぜ」「どのように」戦争に参加していったのか、政界や軍部、世論の動きを解き明かす。山縣有朋の集権線・利益線論による朝鮮半島の中立化、吉野作造の貿易通商の門戸開放を拒むロシアを「文明の敵」とする征露論、石原莞爾がナポレオンの対英戦争のイメージでソ連が弱体なうちに満蒙を制圧しようとした戦略、日中戦争時の「条約や国際法を守る日本、守らない中国」論など、重要なポイントが数多く詰まっていた。
読了日:01月08日 著者:加藤 陽子
漢帝国と辺境社会―長城の風景 (中公新書 (1473))の感想
対匈奴の最前線であった漢帝国時代のフロンティアの社会に対して発掘された出土史料を中心にアプローチしていく内容。燧を最小の基礎単位とする郡県制と同様のシステムに組み込まれていることはもちろん、給与明細から物品の注文書、刃傷沙汰などのトラブルやその解決のための訴訟状といった幅広い内容の文書が発見されていることなどから、当時の漢帝国の統治の緻密性が明らかになり、興味深かった。
読了日:01月09日 著者:籾山 明
さよならローズガーデン 1 (BLADE COMICS pixiv)の感想
1900年の英国を舞台とした伯爵令嬢・アリスと日本人メイド・華子の百合漫画。アリスが読書家であり、華子もまた元々作家志望ということもあり、当時の貴族文化だけでなく、作家や出版社周りの実情や書店の話題もあり、華やかな雰囲気に彩りを添えている。アリスのメンヘラぶりと彼女との結婚を狙う男の登場と、不穏さが漂うが、今後が気になる。
読了日:01月15日 著者:毒田ペパ子
中世ヨーロッパの歴史 (学術文庫)の感想
ローマ帝国崩壊の5世紀からルネサンスの16世紀までのヨーロッパの歴史を俯瞰する。ゲルマン系のカロリング朝と結び付いてその地位を確固たるものとしたカトリック教会、領主等の個人的契約の積み重ねとしての封建制、罪人にとっては罪の赦免を得るという目的のあった十字軍といった歴史のダイナミズムが詳らかに語られる。最低でも高校の世界史レベルの知識がないと読み通すのが厳しいと思う。
読了日:01月20日 著者:堀越 孝一
熱帯魚は雪に焦がれる4 (電撃コミックスNEXT)の感想
東京に修学旅行に向かった小雪。小夏に水族館部を預けるが、その心中には戦災でもどかしい感情が渦巻いているようで…。山椒魚になりたいという小雪の気持ちがわかりすぎてつらい。不安がる小雪先輩に「どんな先輩でも帆波先輩は帆波先輩だよ」と言った後に「おいで」とハグする小夏の後輩としてのムーブが完璧すぎてもっとつらい
読了日:01月30日 著者:萩埜 まこと
君と漕ぐ: ながとろ高校カヌー部の感想
カヌー初心者の高校生2人が練習を積んで競技に参加するまでを描く。恵梨香が舞奈を「人間的に頭が良い」と評していることに(自分のペースに合わせるのが当然だという)彼女の無意識の傲慢さが透けて見えることを地の文で釘を刺している点に、作者の内面描写の容赦のなさとドライさが垣間見えた。
読了日:01月30日 著者:武田 綾乃
中国文明論集 (岩波文庫)の感想
奢侈の概念の変遷や毘沙門天信仰、火葬に対する考え方といった中国社会を縦に貫く論考を行った論文集。各論考の基底に皇帝独裁体制の確立、科学技術や思想の革新、資本主義の発達などにより唐代と宋代の間に中国社会が根本から変動したという唐宋変革論があり、著者の視線の広汎さと鋭敏さが窺える内容となっており、読み応え満点だった。
読了日:01月31日 著者:宮崎 市定
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