疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

とある科学の超電磁砲

新型コロナウイルス流行による外出自粛要請の有効活用。自粛要請程度だったら外出はするけど、季節外れの雪も降っていることだしね。3期「とある科学の超電磁砲T」を見るためのおさらい。

幻想御手(レベルアッパー)

まずこのアニメ、文句なしに面白い。「とある」シリーズはいくつかアニメ化しているが「超電磁砲」その中でも間違いなく白眉。主役4人組の出会いの物語として掴みが上々。4人が各々のどういうキャラなのか顔見世しつつ、舞台である学園都市の背景にも言及。20分程度の枠に過不足なく収める構成力が絶妙すぎて、理想的なアニメの第1話だと思った。

特に初対面である御坂美琴佐天涙子というレベル5とレベル0の邂逅は、本作のシンボリックな核心部分であるためかより丹念に描かれている。レベル5と聞いて上から目線でいけ好かない女だろうという思い込みが氷解して、実際は颯爽とした親しみやすいキャラだったとして評価を改めるまで描いたのが天晴だった。

1期2期とも2クールまでだが、1期に関してはその前半と後半が1クールずつでまとまっていて、1クール×2としても見ることができる。そして1クールあたりのクオリティはシナリオ、キャラクターの動かし方、世界観描写、どれをとっても一級品だと思う。

前半はレベルアッパーを巡る話。能力者のレベルを上げる仕組みの正体が能力者の脳をコンピュータに見立てて処理能力を飛躍的に向上させた並列処理*1で、今の自分の職業的に興味のある話題だった。最初に見たときは自分と無縁でまるで関心がなかったのに人は変わるものだ。コンピュータの並列演算処理には興味がないと言ったけど、当時はジャンルとしての百合*2にも興味がなかった。本作は一個のアニメとして当時から好きだったことに変わりはないけど。年月というものは本当に人を別人に変えてしまうものだ。

自分語りをしてしまったが、レベルアッパーを語る上でキーになったのが佐天涙子が抱く高レベル能力者への劣等感。彼女がレベルアッパーに手を出す経緯については、丁寧に語ってくれているのでより一層切ない。自分も意識を失うのではないか、と恐れる佐天さんを励ます初春さんの友情の篤さにからも目が離せなかった。

置き去り(チャイルドエラー)

続いて後半戦。13話がただの水着回に見えるのに「2001年宇宙の旅」ネタを仕込むあたり油断ならない。その後は18話あたりまで固法先輩や鉄装先生、常盤台の寮監のような脇役をクローズアップさせるやや脇道に逸れた話が続く。その中で具体的なエピソードをもって登場人物を紹介しつつ、群像劇としての超電磁砲を盛り立てる方向性が冴え渡っている。ギャグとシリアスの配分も妙技としか思えないほど絶妙で、誰を登場させても面白いから超電磁砲1期はすごい。

終盤は何らかの理由で親元から離され学園都市で孤児として暮らす置き去り(チャイルドエラー)やレベル6の人体実験を巡る展開。本作のラスボスであるテレスティーナの顔芸と三下チンピラのような口調以外は特に不満はなし。この顔芸と口調は過剰演出でキツいけど、全体から見れば取るに足らない。殊更に論うほどのことでもないと思う。

最終話の展開は佐天さんのためのボーナスステージのようなものだけど、彼女がああできたのもみんなのおかげだから友情パワーの成せる業だからそれでいい。やっぱりカッコいいのは御坂さんでかわいいのは佐天さんだよなあ。8年ぶりに見るといろいろな発見や気づきがあって充実した24話だった。S(2期)も続けて見たいけど、また今度にして放送中のT(3期)を見たいところ。

*1:グリッドコンピューティング

*2:私の場合、2012年以降に見た「ストライクウィッチーズ」がそもそも百合に興味を持ったきっかけ