2020年4月の読書
4月の読書メーター
読んだ本の数:13
読んだページ数:3508
ナイス数:182
ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)の感想
題名を一例として、少年犯罪の中には発達障害や軽度の知的障害による「認知の歪み」に起因するものが多いにもかかわらずそれが一般に気付かれていない問題点を説く。認知の歪みによる犯罪として「遊ぶための金がないから人から強引に奪った」「女性に性的暴行を働いたが相手は喜んでいると思った」といった言動や表情をもとに相手の思考や感情を察する能力の欠如がある。自分もここまで極端ではないものの、相手の考えを汲み取ることが不十分な場面は多々あったので反省したい。
読了日:04月02日 著者:宮口 幸治
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)の感想
なぜユーラシア大陸、とりわけ西ヨーロッパが海外に植民地を保有するなどの文明の隆盛を誇ったのか。人種の優劣ではなく、地勢や植生や人間同士の交流や人口の稠密といった環境の面から豊富で広範な知見や文献を援用して説き明かす。南北アメリカの原住民が伝染病の抗体を持っていなかったために人口が激減、抗体を持つ西欧諸国の征服者の支配を容易ならしめたという説は小耳に挟んだことがあるが、論拠を提示されて解説されると心胆寒からしめられるものがある。
読了日:04月06日 著者:ジャレド・ダイアモンド
文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)の感想
タイトルの「銃・病原菌・鉄」は西欧が他の地域への優越を確定させた要素。オセアニアや中国の事例を基に、環境こそが文明の差異を生じさせた絶対的な要因であることを具体的に手を替え品を替え繰り返し縷々と述べる。新型コロナウイルス流行のこともあり、家畜となる動物が媒介した病原菌に注目したが、文化を異にする人間同士の接触や家畜となる大型哺乳類(牛や馬など)の存在が文明の発展の加速につながるという視点は今までなかったもので極めて興味深かった。
読了日:04月09日 著者:ジャレド・ダイアモンド
知っておきたい感染症: 21世紀型パンデミックに備える (ちくま新書)の感想
21世紀以降世界的に猛威を振るったエボラ出血熱、SARS、MERS、鳥インフルエンザ、デング熱、SFTS(マダニが媒介)の事例に触れて対策を講じる警世の書。ヒトやモノの大量かつ高速な移動が盛んになるなど、社会的インフラが整備されるようになったことで、かえってパンデミックのリスクが高まることが恐ろしい。『銃・病原菌・鉄』でも触れていたが、人が密集する場所では感染と隣り合わせであることを肝に銘じる必要があると思った。
読了日:04月10日 著者:岡田 晴恵
PSYCHO‐PASSサイコパス3〈A〉 (集英社文庫)の感想
アニメのストーリーを補完する形で読めるノベライズ。ザイルパートナーとしての灼と炯の関係や、アニメでは詳細にトレースできなかったドローン墜落事件の経緯について追うことができた。
読了日:04月13日 著者:吉上 亮,サイコパス製作委員会
双子百合えっちアンソロジー (百合姫コミックス)の感想
内容はタイトル通りで、R-18でないのが不思議に思う程度だった。双子同士の閉じた関係から第三者が絡むものまであって意外と作風の幅が広い。
読了日:04月15日 著者:掃除 朋具,あおと 響,甘露 アメ,コダマ ナオコ,白玉 もち,すと,雛原 えみ,凡竜,焼肉定食
小林一三 - 日本が生んだ偉大なる経営イノベーター (単行本)の感想
阪急電鉄や宝塚歌劇団、東宝の創設者である実業家小林一三の評伝。銀行員時代の日本における住宅ローンの発案や、沿線地の住宅のディベロッパーとしての側面は知らなかったので勉強になった。また、第二次近衛内閣時代の小林一三商工大臣vs岸信介商工事務次官の政治闘争がまさに仁義なき戦いだったのが印象深い。彼の最大の功績は平日は電車で郊外から都心に通勤通学し、休日はデパートで買い物や外食を行い、遊園地や動物園のようなレジャー施設や映画・舞台鑑賞で余暇を過ごすという日本の中流中産階級のライフスタイルの確立にあると確信した。
読了日:04月16日 著者:鹿島 茂
感染症の世界史 (角川ソフィア文庫)の感想
人類と微生物の軍拡競争と称して、インフルエンザ、ペスト、コレラ、結核、天然痘、梅毒といった長きにわたる人類の感染症への対抗策の積み重ねの歴史を概観する。治療を受けた経験がある者としては、胃がんや胃潰瘍の原因となるピロリ菌が人類が寿命を延ばすうちに病原性を強めていったという点に人類と微生物の関係性が顕著に表れていると思った。人間が作った都市という環境に最も適応し、人類に対抗すべく進化を遂げてきたのはカラスのような身近な動物よりも目に見えない病原性の微生物なのかもしれない。
読了日:04月20日 著者:石 弘之
フロレンス・ナイチンゲールの生涯の感想
脚を悪くした子犬の脚に副木をつけるということにも妥協をしなかった良家の令嬢は、地獄のようなクリミア戦争の現場で公衆衛生と統計学の導入に東奔西走して戦病死者を半減させた。白衣の天使のイメージが今なお強いナイチンゲールだが、国の大臣が相手でも妥協を知ることのない筆舌に尽くしがたい熱意と行動力をもって医療の世界に革命をもたらしたことは銘記すべきだと思った。
読了日:04月23日 著者:宮本 百合子
侯景の乱始末記──南朝貴族社会の命運 (志学社選書)の感想
表題の侯景の乱とその後の梁朝とその後継政権のあらましと歴史的意義を記述した名著の復刻増補版。侯景の乱は漢朝以来の中国王朝における貴族社会の栄華に終止符を打った戦乱だった。名望や徳の高さといった世評を拠り所とする貴族の地盤が実力主義の北朝の武人たちに掘り崩され、隋朝以降に科挙制度が徐々に浸透するにあたっての地均しになったことが見て取れる。
読了日:04月28日 著者:吉川 忠夫
Dr.STONE 1 (ジャンプコミックス)の感想
西暦5738年、人類が石化して原始時代の文明水準になった世界でのSF冒険ファンタジー。科学の観点から炭酸カルシウムや火薬を発見してサバイバル生活を行うという着想がいい。この漫画が自分の少年時代にあれば、理科の授業ももっと楽しめたかもしれない。「『科学ではわからないこともある』じゃねえ わからねえことにルールを探す そのクッソ地道な努力を 科学って呼んでるだけだ……!!」
読了日:04月29日 著者:Boichi
アクタージュ act-age 1 (ジャンプコミックス)の感想
俳優として頂点へと上り詰めていく単純なサクセスストーリーではなく、どこか危うい魔性の少女と彼女の天稟に賭けた映画監督の物語という印象。天性の役者が主役という点で「ガラスの仮面」を思わせる話だが今後どうなるやら。
読了日:04月29日 著者:宇佐崎 しろ
みんなを幸せにする資本主義―公益資本主義のすすめの感想
株主優遇に偏重した欧米的な金融資本主義も、中国の強権的な国家資本主義も経済格差を生む点で共通している。本書が第三の軸として訴える公益資本主義は、まず社員やその家族、そして顧客や地域へと波及的に利益を還元するもの。
読了日:04月30日 著者:大久保 秀夫
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