疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

2020年5月の読書

5月の読書メーター
読んだ本の数:16
読んだページ数:4606
ナイス数:103

感染症の中国史 - 公衆衛生と東アジア (中公新書)感染症の中国史 - 公衆衛生と東アジア (中公新書)感想
コレラやペストの流行に見舞われた清末~民国期の中国を中心とした東アジア地域における感染症の事例と衛生行政の取り組みについて。感染症対策を民間団体に丸投げしていた「小さな政府」の清が感染拡大を機として積極的に民政への介入をするようになった点が「大きな政府」へのターニングポイントとなり、中華人民共和国に至るまでの方針として続いている点が見逃せない。台湾への公衆衛生導入や日中の日本住血吸虫症対策などについても勉強になった。
読了日:05月01日 著者:飯島 渉
くるみ割り人形とねずみの王様 (河出文庫―種村季弘コレクション)くるみ割り人形とねずみの王様 (河出文庫―種村季弘コレクション)感想
「PSYCHO-PASS3」の世界で発禁となった、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」の原作小説。くるみ割り人形の正体、七つの頭を持つ不気味なねずみの王率いるねずみとの戦争、マリーが招待されたおとぎの国のシーンと、童話らしいメルヘンチックな雰囲気と残酷で血腥い描写が同居した幻想的な作品だった。
読了日:05月02日 著者:E・T・A・ホフマン
たとえとどかぬ糸だとしても1 (百合姫コミックス)たとえとどかぬ糸だとしても1 (百合姫コミックス)感想
兄嫁が想い人、という時点で報われぬ恋の予感しかしないからこそ今後どのような展開になるのか楽しみ。恋愛と家族愛とのせめぎ合いといったところか。クロちゃんがいいキャラしている。
読了日:05月03日 著者:tMnR
花と星 (1) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ)花と星 (1) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ)感想
最近電子書籍として復刊した2011年の漫画。卓球一筋で生きてきた花井さんと、かつてのライバルで天然なところのある星野さんが中心の話。と思いきや扉絵を見る限り一筋縄ではいかなそうだし、実際そういう展開が繰り広げられる。
読了日:05月04日 著者:鈴菌 カリオ
上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花(1) (ヤングチャンピオン・コミックス)上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花(1) (ヤングチャンピオン・コミックス)感想
酒を飲むと人が変わる女子大生と、その周囲の人々のキャンパスライフ。題材が題材なので終始色気を感じる。酒に関する知識はもちろんのこと、キャラの服装などファッションセンスなどディティールがしっかりしているあたり独自性が強くて好き。
読了日:05月05日 著者:
花と星 (2) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ)花と星 (2) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ)感想
メイン二人の天然さゆえのギャグが多めな分、シリアスなシーンの鋭さが映える印象。船見先輩には強く生きてほしい。1巻にも言えるが、おまけ漫画で作者の本領が発揮されているような気がする。
読了日:05月06日 著者:鈴菌 カリオ
感染症 増補版-広がり方と防ぎ方 (中公新書 1877)感染症 増補版-広がり方と防ぎ方 (中公新書 1877)感想
新型コロナウイルス流行に合わせて増補版出来を迎えた2006年初版の新書。感染症の流行の過程から症状に関する記述だけでなく、日本語・英語・中国語の発音の違いが感染範囲の差の一因(日本語は英語や中国語よりも破裂音が少ないため、日本で飛沫感染するウイルスの流行が抑えられる傾向にある)になることや、マスク着用による感染拡大防止のメカニズムの記述など実証的な内容が多くて興味深かった。
読了日:05月06日 著者:井上 栄
天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)感想
「SFの満漢全席」と称される壮大なスペースオペラの劈頭を飾る巻。時系列的には後ろから数えた方が早いというのが特徴。人間から宇宙生命体と思しき種族、アンドロイドなど多様な登場人物が顔見世し、植民星で反乱が勃発するというストーリー自体は興味深いが、説明的文章に比重が置かれやや盛り上がりに欠ける印象。
読了日:05月08日 著者:小川 一水
天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)感想
この手の作品の常か、登場人物が次々と呆気なく斃れていくさまはまさにレクイエムだった。続きを読めば、多少なりともその世界観の全容を多少なりとも見渡すことができるだろうか。
読了日:05月10日 著者:小川 一水
天冥の標 2 救世群 (ハヤカワ文庫JA)天冥の標 2 救世群 (ハヤカワ文庫JA)感想
現代世界を舞台に架空の新型感染症「冥王斑」のパンデミックが世界に与えた影響と、医療従事者や孤島に隔離されて新たな社会を築く「回復者」の物語。1巻とのつながりもほんの少しだが感じた。COVID-19のパンデミックといい現実の状況もさることながら、現代社会が舞台としてリアリティを伴った筆致で感染拡大の過程や人々や社会への諸影響を描写していたので人類が99%死滅して南極に追いやられる「復活の日」よりもリアリティを強く感じた。そしてこの巻の物語も全体の中の一部分に過ぎないという途方もない規模に感服せざるを得ない。
読了日:05月17日 著者:小川 一水
潮騒 (新潮文庫)潮騒 (新潮文庫)感想
再読。離島の漁村を舞台とする若き男女の物語だが、清冽で純朴な言葉や感情のやり取りが繰り広げられる瑞々しい作風が心地よい。新治と初江の関係の瑞々しさが一番の見所だが、島の読書好きの若者たちがヴェルレーヌの詩について語り合うシーンがなぜか印象に残っている。
読了日:05月22日 著者:三島 由紀夫
サクラの降る町 (KAエスマ文庫)サクラの降る町 (KAエスマ文庫)感想
「アマザクラ」という空から桜の花弁が降る現象が起こる世界観での3人の少女のすれ違いと和解、友情を描く。作者と京アニの本気の片鱗が見える良質な百合小説だった。アニメ化希望。劇場アニメもいいけど「響け!ユーフォニアム」1期の時のように1冊1クールでじっくりやってくれるとなお嬉しい。
読了日:05月23日 著者:小川 晴央
宦官(かんがん)―側近政治の構造 (中公新書)宦官(かんがん)―側近政治の構造 (中公新書)感想
学生時代以来に読んだ古典的新書。宦官はあくまでも皇帝の家の使用人として捉える必要があると再考。だからこそ、皇帝の孤独に付け入る形で寵愛を受けて専横を極めた宦官もいたし、亡国の皇帝に殉じた宦官もいたし、幼少の頃から遊び友達や家庭教師のような存在の宦官もいたんだとわかる。
読了日:05月26日 著者:三田村 泰助
空の境界(上) (講談社文庫)空の境界(上) (講談社文庫)感想
「生きているのなら、神様だって殺してみせる」
直死の魔眼の持ち主である両儀式を主人公とする伝奇小説の金字塔。Fateシリーズなどきのこワールドを経た身としては、その世界観やらストーリーがようやく浸透してきた。浅上藤乃の出番は思ったより少なかった。「根源」「抑止力」の概念が興味深い。
読了日:05月27日 著者:奈須 きのこ
空の境界(中) (講談社文庫)空の境界(中) (講談社文庫)感想
虚ろな日々を送る臙条巴と、その弱みを握る荒耶宗蓮。「本物と偽物」というテーマから、どことなく臙条巴衛宮士郎の原型だろうなと思った。宗教家として真面目すぎたがゆえに絶望して人の死を蒐集するようになった荒耶宗蓮は、言峰綺礼と間桐臓硯のハイブリッドのようなものかもしれない。
読了日:05月29日 著者:奈須 きのこ
空の境界(下) (講談社文庫)空の境界(下) (講談社文庫)感想
荒耶という大物は消えたが、根源を巡る忌まわしい因縁の物語は続く。式に代わって幹也が白純里緒の「殺人」を行うといったラブストーリー要素が眩しい。作中の二人どころか劇場版アニメで声を担当した中の人同士まで結婚してしまうだけのことはある。
読了日:05月31日 著者:奈須 きのこ

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