疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

百合の日2020

毎年恒例の百合の日記事だが、これまた恒常化しているになっている記事更新の遅刻*1

過去記事はこちら
kamikami3594.hatenablog.com

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百合の日に百合カフェに遊びに行った件について


去る6月25日は百合の日*2ということで、今月3日に新宿二丁目の百合カフェanchorにお邪魔することにした。

アニメ化された定番の人気作から、タイトルすらまったく聞いたことのない作品まで百合漫画が豊富だった。百合漫画に関しては下手な漫画喫茶のラインナップを軽く凌駕しているのでは、と思えるほど。



百合の日限定メニューの激辛マグマカレーがとても辛くて、ラムコークを飲みつつ悶絶しながら食べることに。ピロリ菌除菌で慢性胃炎を治癒してから激辛料理を食べる頻度を減らしたからなあ……。でも美味だった。これ大事。

前々から気になっていた作品から初めて知った作品までいろいろ読むことができて、上質な時間を過ごせた。場所が場所なだけあって、他のお客さんの洗練された百合トークも聞こえてくる百合の聖地だった。毎週は無理でも毎月寄りたい。

簡単なレビュー

百合の日記事は毎年1年間の百合作品について振り返っているので、今年も慣例に則ってみる。主に今まで取り上げてこなかった作品と完結した作品について。

ラグタイム

最高すぎたのでBD買った。過去記事書いてるので見てね💖
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さよならローズガーデン

華子とアリスの関係が互いに人生の伴侶であることは無論、メイドと令嬢の主従関係であると同時に出身国や身分・立場を超えた友同士であり、作家とその読者の関係だったという重層性が本作最大の特色だと思う。自分の未来を自分で選べる女子教育を日本で実現させるために英国に渡った華子、という設定も開明的な要素があって好き。というかよくぞこの幕引きをやってくれて感心&感謝。そんな彼女を支えたのが(これは後に明らかになることだが)アリスの作品に登場する「行動を伴わない信念はただの空想でしかない」という一節というのは見事としか言いようがなかった。

彼女のイデア

彼女のイデア 1 (電撃コミックスNEXT)

彼女のイデア 1 (電撃コミックスNEXT)

芸能活動を続ける女子高生と彼女に憧れる女子高生の物語。憧れの相手への理想と現実の姿とのギャップがテーマであり、「憧れの相手には憧れのままでいてほしい」というエゴが見え隠れしているが、そのエゴを保つための努力を「澄花を作ってあげる」と表現するセンスが好き。

上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花

酒を飲むと人が変わる女子大生と、その周囲の人々のキャンパスライフ。題材が題材なので終始色気を感じる。酒に関する知識はもちろんのこと、キャラの服装などファッションセンスなどディティールがしっかりしているあたり独自性が強くて好き。郡上先輩がいいキャラしてる。

アタシのセンパイ

2018年11月刊行だが、上記の百合カフェで読んで感銘を受けたので取り上げることに。端正な絵柄から迸る岡崎センパイの変態ドMぶりがすごくすごい(褒め言葉)。ギャップ効果とはまさにこのことか。元カノ(?)の吉田さんだけでなく塚本さんまで虜にしてしまう魔性の女ぶり。宿業が深すぎる。

処刑少女の生きる道

最新3巻は「貴女に、なりたい。貴女に、なれない。」という帯の惹句の威力が桁違いすぎる。今まで以上に女女巨大感情がひしめき合うとんでもない(褒め言葉)巻だった。憎悪も対抗意識も憧憬も羨望もどれも量・質ともに一級品。「女主人公のラノベは売れない」というジンクスがまことしやかに囁かれていたラノベ界隈で、ここまでの作品を書いた作者に脱帽。

サクラの降る町

「アマザクラ」という空から桜の花弁が降る現象が起こる世界観での3人の少女のすれ違いと和解、友情を描く。作者と京アニの本気の片鱗が見える、情感豊かで良質な百合小説だった。アニメ化希望。劇場アニメもいいけど「響け!ユーフォニアム」1期の時のように1冊1クールでじっくりやってくれるとなお嬉しい。

やがて君になる 佐伯沙弥香について

読み終えたことでスピンオフである本作も無事完結し、「やが君」の物語もついに終幕を迎えたんだなあ、という感慨に浸った。陽は沙弥香が今まで出会った人とは方向性が異なるが、だからこそ運命の出会いであるという感覚が引き立つ。彼女の容姿を考えると侑の影響が強いのかもしれないが。蛇足になるが、冒頭から「すごくすごい」とか「顔が最高」みたいな限界オタクのような語彙が飛び出していたあたりが印象深い。

明日の世界で星は煌めく

終末を迎えた世界での二人の女子高生(+ペンギンの使い魔)のサバイバルストーリー。悲惨な状況ながら、淡々とした文章で綴られる物語であるため、悲愴さを感じさせないバランスがちょうどいい。イラストのかわいらしさも然ることながら、時折見せる主人公由貴の行動力と感情の強さに惹きつけられる。

わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ! (※ムリじゃなかった!?)

自称陰キャJKとスパダリ系JKというキャラ自体はそこまで珍しくはないと思う組み合わせとしては新鮮味を強く感じた。平凡に見えて真唯相手に割と強気に出ていたれな子と、どこか天然な真唯の掛け合いは変化に富んでいて読んでいて飽きがこなかった。脇を固めるキャラも魅力的。特に向日葵。全体的に同作者の『ありおと』*3より好きかも。


ぼくが優柔不断なせいで結局読んだ作品の半数近くのタイトルを取り上げているような気がする。全体的に小説が多め。

やがて君になる』『あの娘にキスと白百合を』のようなメジャーどころは完結を迎えたし、1巻発売当初から注目してきた『熱帯魚は雪に焦がれる』『行進子犬に恋文を』あたりは大詰めを迎えつつある。振り返ってみて身をもって世代交代を実感することとなった。あと今年は『安達としまむら』のアニメやら、仲谷鳰氏イラストの『このぬくもりを君と呼ぶんだ』の刊行やらが控えているので、まだまだ百合界隈から目が離せない。

*1:実際に記事を書いているのは6月30日

*2:ユリが誕生花の日であるため。あと離婚した両親の結婚記念日

*3:正式なタイトルは『女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話』