疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

2021年2月の読書

2月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:2615
ナイス数:175


現実でラブコメできないとだれが決めた? (ガガガ文庫)現実でラブコメできないとだれが決めた? (ガガガ文庫)感想
作者の過去のラブコメ作品や郷土愛が窺える一作。かつて挫折を味わったにもかかわらず、友人をはじめ在校生のプロフィールを詳細に調べ上げて現実を変えてやろうという長坂耕平の心意気が気に入った。あと相棒的ポジションの上野原彩乃が「とらドラ!」の逢坂大河と同じような道を辿りそうだったが、そうは問屋が卸さなそうな点も今後に期待できる。そして清里芽衣が抱えている心の空洞が不気味だった(褒め言葉)。
読了日:02月01日 著者:初鹿野 創
君と綴るうたかた(1) (百合姫コミックス)君と綴るうたかた(1) (百合姫コミックス)感想
絵柄に惹かれて買ったが、控えめに言って全人類読んでいただきたい漫画だった。雫の自己嫌悪の強さと、彼女の書く小説やら暗い過去やらをすべて知った上で彼女を受け入れる夏織の包容力の対比が鮮明で素晴らしい。二人の身長差が好きだけど、表紙では背の低い夏織が雫を見下ろす構図なのはもっと好き。
読了日:02月02日 著者:ゆあま
姫神の巫女 1 (電撃コミックスNEXT)姫神の巫女 1 (電撃コミックスNEXT)感想
往年の名作『神無月の巫女』のスピンオフ。本作は主に皇月千華音の視点で物語が進行する。彼女は本編の姫宮千歌音と比較にならないほどチョロすぎて、全体を通してシリアスな作風なのに彼女の「媛子を好きになったら負け」とばかりのモノローグが始まる度に笑ってしまった。
読了日:02月03日 著者:介錯
日没日没感想
作中のリアリティが抜きんでていたためか、今までの人生で読んだ小説の中でも五指に入るほど読後感の悪い小説だった。作家マッツ夢井は自らが著した小説が反道徳的であるとして国の機関(文化文芸倫理向上委員会)によって収監され、囚人も同然の更生プログラムを受けることを余儀なくされる。文倫が読者(一般市民)からの通報を受けて初めて動くという設定も手伝ってか、彼女を追い詰める悪辣さと陰湿さは悍ましいという形容詞では到底表現しきれるものではない。本作の描く社会がいつまでもフィクションの中だけに留まることを切に願う。
読了日:02月08日 著者:桐野 夏生
上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花 2 (2) (ヤングチャンピオンコミックス)上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花 2 (2) (ヤングチャンピオンコミックス)感想
酒飲みのストーリーの中で酒が苦手で浮き気味だったぼたんの過去が明かされる。その上で共犯者同士の如く秘密を共有して酒を飲む愉しみを知っていくストーリーがいい。郡上先輩もかわいい上にカッコいい。やっぱり本作は心地よく酒を飲みながら読みたい。
読了日:02月12日 著者:
処刑少女の生きる道(バージンロード)5 ―約束の地― (GA文庫)処刑少女の生きる道(バージンロード)5 ―約束の地― (GA文庫)感想
今回も顔が良くていい性格(褒め言葉)の少女たち同士の濃い人間関係が満載で大満足。感情が強すぎて互いにいけ好かない相手なのに呉越同舟したり、相手の窮地にあっていつでもとどめを刺せるけどためらうという関係性に見応えがあった。そして次の巻で決戦の火蓋が切って落とされそう。
読了日:02月14日 著者:佐藤真登
饗宴 (岩波文庫)饗宴 (岩波文庫)感想
ソクラテスら数名がワインを片手に催す饗宴を舞台としたプラトンの対話篇。フィロソフィア(philosophy)の語源が「知を愛する」ことにあることは知っていたが、美や善性に対する愛を含むという位置付けや、少年愛や教育もその愛の範疇に収めているという守備範囲の広さ驚いた。
読了日:02月14日 著者:プラトン
飛び立つ君の背を見上げる (響け! ユーフォニアムシリーズ)飛び立つ君の背を見上げる (響け! ユーフォニアムシリーズ)感想
ついに中川夏紀が主人公に!高校卒業を迎えて大きな転換期を迎えた南中カルテット4人の関係性を濃やかに描写する。夏紀フィルターを通して見ると、希美の陽性リーダー気質とみぞれの浮世離れした雰囲気がより鮮明に浮かび上がる。個人的に夏紀に対して性格的に近しい部分があってシンパシーを感じていたので、優子が彼女に「代わりがないからじゃなくて、代わりがいくらあってもアンタを選ぶ」と言ったシーンは彼女の実存的不安を晴らす感無量の場面だった。なかよし川大氾濫。
読了日:02月17日 著者:武田 綾乃
彼女のイデア 3 (電撃コミックスNEXT)彼女のイデア 3 (電撃コミックスNEXT)感想
最終巻。きれいな形でランディングを迎えて安堵。澄花のため、彼女の秘密を知る宮奈の元に直談判して問題を解決に導くシーンが今回のハイライトか。自分が作り出した自分の偶像に翻弄されるがままだった宮奈も不憫と言えば不憫だが。芸能人としてはなく、一個人として相手を見るのは容易いようで意外と難しいのかもしれない。
読了日:02月17日 著者:冬芽 沙也
タテ社会の人間関係 (講談社現代新書)タテ社会の人間関係 (講談社現代新書)感想
1967年に初版が上梓された、日本に特有の人間関係や組織の様相を論じた新書。日本人は「場」という特殊な共同体(ゲマインシャフト)を重んじ、感情を介して強く結び付く傾向にある。それゆえ、離れて暮らす兄弟姉妹よりも共同生活の相手となる入婿や嫁の方が重要視される、労働組合の形も企業横断的な職能別のものよりも職種に関わらず企業単位で形成される、同期の社員同士の横並び序列意識、政党内の派閥形成といった現代でも十分通用する鋭い指摘が印象深い。
読了日:02月28日 著者:中根 千枝
論語 (岩波文庫 青202-1)論語 (岩波文庫 青202-1)感想
「四書」の筆頭にして儒教の始祖である孔子の言行録。他人が自分を理解してくれたり評価してくれたりしないことを嘆く前に、まずは学問や実践を通じて自分の身を固めるが重要だと思った。そのためには過ちを改めることを恐れない、知らないことは知らないと認める、己の望まないことを人にしない、学ぶことを楽しむこと、といったことが重要だと思った。
読了日:02月28日 著者:

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