疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

刑法入門

刑法入門 (岩波新書)

刑法入門 (岩波新書)


タイトル通り、刑法の意義、役割、適用について概説した本。社会科の授業でも登場した罪刑法定主義法の不遡及の原則という基本的な部分から詳しく解説する。

参考になったのは、
・「拘留」(軽犯罪法違反に課される短期自由刑(1~30日)と「勾留」の違い
・そもそも「犯罪」とは倫理違反(悪いこと)なのか利益侵害(迷惑なこと)のどちらなのか
・刑罰を正当化する論拠は何か(応報刑論と目的刑論)
・犯罪成立の要件(メルクマール)は、1.犯人の「行為」、 2.行為の「結果」、3.被害としての結果、4.犯人の犯罪意思 であること
・犯罪正当防衛、緊急避難などの事由で「阻却」される場合がある

といったこと。穿った見方をすれば刑法は人の自由の剥奪を正当化する法律であるため、思っていたよりも厳密に条文が定められ、犯罪や刑罰の意義にも鋭い論争があることが印象に残っている。

 刑法の基礎知識が1冊に網羅されている良書だった。具体的事例、判例について勉強するなら、他の本が必要になるだろうが。