疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

2017年9月の読書

9月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2088
ナイス数:23

ギリシア神話を知っていますか (新潮文庫)ギリシア神話を知っていますか (新潮文庫)感想
時に真面目に、時に軽妙にエッセイ風にギリシャ神話の物語を解説した本。個人的には初めて知ったヘラクレスの母アルクメネやヘクトールの妻アンドロマケの逸話が印象に残った。ギリシャ神話の女性は恋愛(性愛)以外の情も強い。
読了日:09月04日 著者:阿刀田 高
風の男 白洲次郎 (新潮文庫)風の男 白洲次郎 (新潮文庫)感想
自分の中で名前だけは知っていたけど、事績は知らなかった人代表格・白洲次郎の評伝。マッカーサーGHQにも直言を辞さず、小人物とみなした人間には取り合わなかったその人となりは、金に糸目をつけなかった父親の薫陶やケンブリッジ大学留学の賜物によることを本評伝は雄弁に語る。事績よりもその立ち居振る舞いで有名な人であるだけのことはあった。惚れる人が多いのもわかる。
読了日:09月11日 著者:青柳 恵介
青の時代 (新潮文庫)青の時代 (新潮文庫)感想
戦後間もない頃に闇金融業を営んで一世を風靡し、光クラブ事件の疑惑の末に自ら命を絶ったカリスマ東大生・山崎晃嗣の人生をモデルとした小説。父親への反抗心、理屈っぽく世間に対して斜に構えるも「お金しか愛していない」という女に騙される性質、仕事はおろか私生活に至るまで分刻みのスケジュールを組まないと気が済まないという執念といった主人公・川崎誠が抱える特異性が迫真的だった。文体そのものは三島由紀夫のものらしく読みやすいが終盤は竜頭蛇尾気味か。
読了日:09月16日 著者:三島 由紀夫
新訳 アーサー王物語 (角川文庫)新訳 アーサー王物語 (角川文庫)感想
魔術師マーリンの登場からアーサー王の死までのアーサー王伝説を網羅する。断片的には知っていながらも、今まで体系的に学ぶことのなかったアーサー王伝説について一通り浚うことができた。訳がやや古いけど、内容はまとまっていて読みやすい。
読了日:09月20日 著者:トマス ブルフィンチ
吸血鬼ちゃん×後輩ちゃん1 (電撃コミックスNEXT)吸血鬼ちゃん×後輩ちゃん1 (電撃コミックスNEXT)感想
Web連載時から注目していた吸血鬼ものの百合漫画。局部は隠しているのに、吸血行為がそのへんの性行為よりもずっと背徳的でエロいのがすごい。完璧さを求められてきた生徒会長のアイリスがコミュ力ゼロの後輩沙羅に引き込まれていく過程も好き。それにしても続きの気になる幕引きよ。吸血鬼ものに外れはない!?
読了日:09月28日 著者:嵩乃朔
世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち (文春文庫)世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち (文春文庫)感想
2008年に起こったサブプライム危機を主題とした映画「マネー・ショート」の原作にあたるノンフィクション小説。低所得の移民など低信用者向けの住宅ローンを回収できないリスクを抑えるための債権そのものを細切れにして金融商品として広く販売した結果、住宅バブルが起こったものの、ローンの返済が困難になった債務者が続出して金融危機が起こったという、サブプライム危機の仕組みを浮き彫りにする。その一方でバーリのようにバブルの実態を察知するものもいたが…。こうした合成の誤謬を見抜いた人が必ずしも報われないという現実が苦い。
読了日:09月29日 著者:マイケル・ルイス
明るい記憶喪失 1 (MFC キューンシリーズ)明るい記憶喪失 1 (MFC キューンシリーズ)感想
記憶を喪失したアリサと同居人のマリの生活を描く、記憶喪失という重めのテーマに反して、タイトル通り内容はライトな百合ラブコメ4コマ漫画。気が付いたら自分好みの相手と同棲していたという筋書きだが、アリサがとにかくマリに対してこれでもかと言わんばかりにストレートに好意を向けてくるので、真面目でクールなマリも彼女と上手いことやっていけているというなかなか素敵な作品。
読了日:09月29日 著者:奥たまむし
明るい記憶喪失 2 (MFC キューンシリーズ)明るい記憶喪失 2 (MFC キューンシリーズ)感想
1巻から明るい雰囲気は続くも、同棲生活を送る中ならでは(?)の問題も浮上してきて、なかなか一筋縄とはいかないあたりが何とも面白い。アリサ、記憶を失う前から性格が変わっていないなあ…。次回はアリサが記憶を失った経緯に触れるそうで楽しみである。
読了日:09月30日 著者:奥たまむし
あの娘にキスと白百合を 3 (MFコミックス アライブシリーズ)あの娘にキスと白百合を 3 (MFコミックス アライブシリーズ)感想
園芸部の二人、拗れすぎだろうという感想。この二人の姿が白峰×黒沢コンビの行く末を暗示しているような気がしてならない。
読了日:09月30日 著者:缶乃

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きみの声をとどけたい

実際は見てからしばらく間が空いたけど、こういう見ていて清々しさを感じる映画の感想はなるだけ積極的に述べていきたい。最初は新宿の劇場で見ようと思ったけど、当日の上映時間を逃して錦糸町まで足を運ぶことになったけど、その甲斐は十二分にあった。

kimikoe.com

コトダマの力

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プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い

アニメ版「Fate/Zero」からFateに入り、現在はFGO漬けの日々を送るダメ人間による劇場版「プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い」の感想。Fateシリーズの設定の知識はあること前提でのお話となります。

anime.prisma-illya.jp

事実上のプリズマ☆シロウ

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2017年8月の読書

8月の読書メーター
読んだ本の数:3
読んだページ数:1105
ナイス数:27

雪の鉄樹 (光文社文庫)雪の鉄樹 (光文社文庫)感想
読み終えて、読者を引き込む訴求力抜群の小説だと思った。自分の育った複雑な家庭環境や過去の贖罪意識に囚われる主人公雅雪に沿って、彼の人生を否応なく追体験することとなった。どこか真面目で潔癖さすら感じさせる一方で、食器皿を灰皿として使ったことを舞子から咎められて自分の歪さを悟らされるシーンがあるように、彼の人生が変わっていくあたりに読み応えがあった。
読了日:08月31日 著者:遠田 潤子
あかりの湖畔 (中公文庫)あかりの湖畔 (中公文庫)感想
とある山の頂上で食堂を経営する一家の三姉妹を中心とした作品。誰しも人に言えない秘密を抱えて生きている、ということがテーマで、たとえ秘密があっても許し合える雰囲気があった。妹二人が自立しつつある中、長姉の灯子だけが家に残って現状維持の生活を続けようとしているのが印象深い。
読了日:08月26日 著者:青山 七恵
観応の擾乱 - 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い (中公新書)観応の擾乱 - 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い (中公新書)感想
「日本史上最大の兄弟喧嘩」と称される観応の擾乱を概説。保守的な印象の足利直義と新興武士に支持される革新的な人物とされてきた高師直(と足利尊氏)の対立構図を前提とする通説を改める最新の知見が盛り込まれている。南北朝の抗争も重なって泥沼の時代にあったのがこの観応の擾乱であったという位置付けができた。足利尊氏、同じ幕府創設者の源頼朝徳川家康と比べると影が薄かったけど、割と人間味があって魅力的に映った。
読了日:08月08日 著者:亀田 俊和

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