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L'aube de l'horizon

ごきげんよう

ストライクウィッチーズ

アニメ レビュー

最初は見てドハマりするとは思わなかったアニメの典型例。

ストライクウィッチーズ Blu-ray Box

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わたしにできること

ストライクウィッチーズ」のアニメ本編を見たきっかけは2012年の3月、近場の映画館に「劇場版 ストライクウィッチーズ」を見に行ったことに遡る。本編未視聴のまま、TwitterのTLで盛り上がっていたためにその場のノリという軽い気持ちで見に行ったものだが、結果的にはこれが私をスト魔女の虜にした。ついでに言うと私に百合属性が身に付いたのも、この時のノリがきっかけだと断言してもいい。私にとっての百合の覚醒については、「ストライクウィッチーズ2」の記事参照。

本作は現実の第二次世界大戦期のヨーロッパをモデルとした架空の世界で、人類の敵ネウロイと戦う「ウィッチ」と呼ばれる特殊能力を持つ各国選りすぐりの少女たちで結成された、第501統合戦闘航空団「ストライクウィッチーズ」の戦いを描いたアニメ。坂井三郎やエーリヒ・ハルトマンといった実在のエースパイロットをモデルとした描写が濃密で魅力的なキャラクター、しっかりした時代やミリタリーの考証もあり、コアなファンに恵まれたシリーズでもある。強力な治癒魔法を使える扶桑皇国の宮藤芳佳が501の戦闘隊長であった坂本美緒にスカウトされることで、彼女の、そして501の運命の歯車が動き出す。

これからスト魔女を語る上でキーワードとなるのが「わたしにできること」というフレーズである。オープニングテーマ曲のタイトルや2話のサブタイトルになり、しばしば宮藤が口にしているだけに、本作においては避けては通れない言葉であろう。父親の消息を追う目的もあって期せずして戦場に駆り出されることとなった宮藤は、最初は厭戦感を拭えず「お前にできることはない」と周囲に言われることも度々あった。それでも彼女は得意の治癒魔法を活かして負傷兵の治療にあたったり、素人ながらも恵まれた魔力を引っ提げてネウロイとの戦いに身を投じていくことになる。

宮藤はついこの前まで銃を握ったことすらない一般人であったためか、突拍子もない言動をとることもしばしばある主人公である。思わずそのような言動に走る彼女の心理を垣間見ることができる台詞が下記のもの。階級も年齢も近いリーネとの共同作戦でネウロイを撃破後、リーネに語った台詞である。

「私は今も怖いよ。でも、うまく言えないんだけど、何もしないでじっとしている方が怖かったの」 3話より

恐怖に凝り固まると、身が竦んで身動きがとりにくくなるというのは大いに共感ができるというもの。先に述べた通り、宮藤が軍人になって間もないことを考えると尚更だ。だが宮藤は要所要所でなけなしの勇気を振り絞り、窮地を乗り越えてきた。彼女の発揮する勇敢さに勇気付けられ、感動した人も多いのではないだろうか。私もその一人である。

宮藤芳佳が501にもたらしたもの

本作の主人公は言うまでもなく宮藤芳佳だが、本作は同時に501というチームの話でもある。隊長のミーナは実戦の指揮、事務処理、上層部との折衝と、どれも及第点以上の水準でやり遂げる有能な軍人だが、彼女とて部隊のすべての問題を解決できるわけではなかった。古くからの戦友のバルクホルンは妹が戦争に巻き込まれて意識を失ったことで自暴自棄になったまま。後に宮藤の親友となるリーネは慣れない実戦で戦果を挙げられず余計に気を落とすという悪循環にはまっていた。ガリアのペリーヌはネウロイに占領されたガリアの奪還に前のめりになるあまり他の隊員に険しい態度を崩さない。夜間哨戒でコンビを組むことが多いエイラ以外の隊員とは内気な性格ゆえに距離を置きがちだったサーニャ。501は戦績を挙げつつも主に人間関係の面でどこか不穏さを抱えていたチーム*1だった。

思えば501は結成当初から波瀾含みだった。オストマルクのラウラ・トート*2は故郷をネウロイに襲撃されて失ったトラウマによる独断専行が多く、バルクホルンの苦情や上層部の突き上げによって転属を余儀なくされる、など。

長くなったが、宮藤の加入がもたらした最大の変化は人間関係の改善である。リーネは宮藤の協力もあり、緊張をほぐしてネウロイを狙撃して初戦果を挙げることができた。バルクホルンは撃墜された自分を治癒魔法で救ってくれた宮藤に妹の面影を見出して自棄になるのをやめた。ペリーヌは宮藤の言動に振り回されつつも、彼女の直向きさを認め、狭まっていた視野を広げて周囲を見渡せるようになった。サーニャはエイラだけでなく宮藤をも介して他の隊員とも打ち解けていった。

一般論として、チームは全員が有能で隙のないエリートの集団であるよりも、一人くらいは新人や頼りない人がいた方がまとまりがいいという。理由としては、その方が各員に「自分が支えてやらないと」「自分たちでなんとかしなきゃ」というチームを支えようというインセンティブが働くから。501の場合は、まさに宮藤がその役目を果たした。特に宮藤に次いで経験が浅く、他のメンバーへの劣等感の強かったリーネは、宮藤によって救われたところが大きかったことは間違いない。

え?人型ネウロイとかウォーロックについての話題がまだ?別にそれはここで語ることじゃないでしょ!

*1:それでもエーリカやシャーリーあたりは持ち前のマイペースさ(いい意味で)宮藤加入前からメンタル面も人間関係面もしっかりやってのけていた、と思いたい

*2:彼女の経歴や活躍についてはリーネの姉・ウィルマが主人公のコミック「ストライクウィッチーズ 片翼の魔女たち」参照