疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

2010年代の弔鐘

いろいろあった10年間もこれで一区切り。

2010年代いろいろ


正直なところ、今現在が一番生活が充実している。大学時代は自由だったけど万年金欠。フリーター時代も自由だったけど就職できない劣等感と危機感で24時間365日針の筵状態。


アニメ編はこれ。

以上、ツイートを張り付けただけの手抜き記事でした。

2010年の読書

まあこんな感じかな。シリーズものの最初の巻を読んだ年と最終巻を読んだ年がごちゃ混ぜになっている上に、アニメと違って刊行年ではなく読んだ年単位でノミネートしているという恣意性の極みのような記事なので悪しからず。

2010年 浅田次郎『中原の虹』

中原の虹 (1) (講談社文庫)

中原の虹 (1) (講談社文庫)

清朝末期を舞台としたの大河小説『蒼穹の昴』の続編。なんと張作霖が主人公。彼の型破りぶりは痛快。清朝を亡ぼす悪女としての役割を担った西太后の悲愴な覚悟と議会制民主主義の確立のため奔走するも、非業の死を遂げた宋教仁の最期は涙なしに語れない。

2011年 三上延ビブリア古書堂の事件手帖

北鎌倉を舞台とした本にトラウマがある青年と本の虫である若き美人古書店主の物語。切っても切り離せない本と人との関係を描き切った作品であるというところに心惹かれて夢中でシリーズを読んだことが記憶に残っている。

2012年 ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

この年に読んだのは亀山郁夫訳の光文社古典新訳文庫版。近代思想の是非、父子の相剋、信仰の問題など当時のロシア社会のみならず近代の矛盾や病理から真っ向から立ち向かった小説。イワンの長編詩「大審問官」で人々が自由の価値が理解できないどころか持て余して自由を大審問官に自ら差し出してしまうことを指摘したのが衝撃的に過ぎる。

2013年 ドストエフスキー『悪霊』

悪霊 1 (光文社古典新訳文庫)

悪霊 1 (光文社古典新訳文庫)

無政府主義極左サークルで起こった凄惨な事件と登場人物の奇怪な思想を克明に照射したドストエフスキーの怪作。SF作品で好きなキャラクターの二強が『ハーモニー』の御冷ミァハと『PSYCHO-PASS』の槙島聖護だが、その2人の源流(と勝手にkamikamiが見なしている)ともいえるキリーロフが登場するのが本作。

2014年 オーウェル1984年』

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

二重思考」「ニュー・スピーク」「二分間憎悪」といった悪辣すぎるビッグブラザー率いる「党」の支配術の巧妙さに目を瞠る。フィクションとしての完成度の高さと、ディストピアにおける独裁体制の悍ましさのほぼすべては本作に教わった。

2015年 ウォーターズ『荊の城』

荊[いばら]の城 上 (創元推理文庫)

荊[いばら]の城 上 (創元推理文庫)

重い事情を抱えた令嬢が、また別の重い事情を抱えた掏摸の少女と出会って変わっていく、という王道的な話かと思えばそうでもなかった。スウとモード、二人を軸に物語が続くが、状況が二転三転するミステリー小説らしい展開と、陰謀と愛憎が渦巻く人間ドラマに目が離せない傑作だった。

2016年 佐藤大輔皇国の守護者

皇国の守護者1 - 反逆の戦場 (中公文庫)

皇国の守護者1 - 反逆の戦場 (中公文庫)

銀河英雄伝説』以来にハマった戦記小説。兵站や輜重の概念の相違、兵器の性能や特長、両国の政治・経済体制など、かなり緻密に描写しており、非常に読み応えがある。「銀英伝」のようにイデオロギー対立は重視しておらず、即物的な性格が色濃い。続巻への含みを持たせた状態で最終9巻が終わっており、2部への着手を俟たぬまま著者が物故した『カラマーゾフの兄弟』を彷彿とさせる。

2017年 大江健三郎万延元年のフットボール

万延元年のフットボール (講談社文芸文庫)

万延元年のフットボール (講談社文芸文庫)

万延元年の百姓一揆フットボールという一見結びつかない要素が約一世紀の時を越え、蜜三郎、鷹四兄弟ら登場人物を介して結び付いていく過程がおどろおどろしくもページを繰る手を休めさせない。粗暴かつグロテスクな内容でありながら、本作が私を惹き付けて已まないのは濃密で無駄を感じさせないからか。

2018年 武田綾乃『その日、朱音は空を飛んだ』

その日、朱音は空を飛んだ

その日、朱音は空を飛んだ

自殺を遂げた川崎朱音の死の真相を追求するスクールミステリ。果ての見えない熾烈なマウント合戦が巡り巡って生んだ悲劇だが、見事に誰一人として救われない展開だったので絶望感が今も拭えない。「死者には生者の住まう世界を変えることはできない」というどこか道徳的なのに説教臭さが完全に脱臭されたメッセージを読者の喉元に突きつけるあたり、作者の炯眼ぶりにただただ畏敬の念を覚えるばかり。

2019年 武田綾乃響け!ユーフォニアム

このブログの運営者は武田綾乃先生びいきだから気にしないでね♡高校生を主人公として学校生活を描いた小説として本作を超える小説はもう当分現れないだろうと断言していいレベルの不世出の作品。