行雲流水

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内閣総理大臣 増補版 ――その力量と資質の見極め方


政治家、特に内閣総理大臣にはどのような人物が望ましいのかを論じた本。著者は安倍・福田・麻生内閣厚生労働大臣を担当し、「総理大臣に最もふさわしい人」というアンケートで1位になったこともある有名な政治家。元々の本業は政治学者。

舛添氏が総理大臣に求める資質は10項目。同氏はこれらの要素を実在の政治家の事例に当てはめて説明している。ちなみに( )内は私が勝手に補足したもの。ちなみに、その要素とは、

【普遍的要素】
1.ヴィジョン提示力(政策、未来像の提示)
2.歴史と哲学の素養
3.人心掌握術
4.組織力
5.経験(組織を運営する経験)
【今日的要素】
6.危機の認識と危機管理力
7.カリスマ性
8.テレビ・ポリティクス(マスコミの扱いの上手さ)
9.国際性
10.IT適応力

というもの。例えば鳩山由紀夫氏は4、9、10の要素をそれなりに備えているが、それ以外の要素、特に1、2は決定的に欠如していると評されている。特に今求められているのは旧い秩序の破壊者(織田信長)よりも新たな秩序の創造者(徳川家康)であるという記述にもうなずける。

毛沢東は政治を「血を流さぬ戦争」、政治システム論で有名な政治学者・イーストンは政治を「希少資源の権威的配分」と定義している。ここから導き出されるのは、こうした政治の泥臭さを忘れると偽善や虚飾に陥るということ。こうして「平和的な支配」としての政治を「自分には無関係だから」などと軽んずると、ヒトラーの時のような暴力的支配を許すことになる。

当書を読んで、国民に求められているのは「政治家を育てる」という姿勢、それから『自由論』のミルのいう「一流の人物」になるということだと思った。前者に関しては、日本人は政治家に高すぎる道徳水準を求め、粗探しをして潰すことは多いが、「では誰が政治家に相応しいか?」との問いに答えられる人は少ないのではないか、というのが私の見解である。後者については、国民一人ひとりが政治意識をしっかり持たなければ。著者が政治意識を持たせるために主張していたサラリーマンの源泉徴収制を改めて申告税制にするというのは賛成。政治というのは詰まるところ、国民から徴収した税金を効果的に分配するということだから。

他にも、政治家にとって「庶民性」は本来マイナス、といった興味深い記述も多く見られる。そして政治学の勉強にもなる充実した一冊。舛添氏は学者としてはそれなりなんだけどなあ。