T-34 レジェンド・オブ・ウォー
今年は映画の当たり年かも。
戦車兵の意地
本作はすべての戦車兵に捧げる作品である。ロシアのミハルコフ監督がそう言っていたから間違いない。赤軍の戦車兵とT-34が三面六臂の活躍をして、「パンツァーリート」に「エリカ行進曲」が流れるからもう実写版「ガールズ&パンツァー」と言っても過言ではなかった。チャイコフスキー「白鳥の湖」をバックにT-34の舞踊を披露するシーンあたり、まさにガルパンである。戦車らしからぬどこかシュールな挙動。
前半の大祖国戦争(独ソ戦)に障害物の多いフィールドの戦闘シーンから、中盤の虜囚の辱めを受ける中の脱走計画から後半のプラハへの逃亡劇と、怒濤の展開だったが、流れるようにスムーズで終始興奮が醒めやらなかった。捕虜として収容所にぶち込まれるという閉塞的な状況から、逃走中の開放感と追っ手から逃げる緊迫感が綯い混ぜになった感覚は鮮烈そのものだ。
本作に特徴的なのが戦車戦の射撃シーンのスローモーションで、これが迫力が見るものの目を奪う。間一髪で回避してみせたり、坂の傾斜と跳弾を利用して敵のパンター戦車の底面を撃ち抜いて撃破するなど、アクション映画としての醍醐味も堪能できたのがたまらない。映画館で鑑賞するとその迫力も段違いだ。
そういったエンターテインメント性に富んだ作品でありながら、戦争の悲惨さもしっかり描いていたことは本作に奥行きを与えている。主人公の戦車長イヴシュキン少尉の仲間の戦車乗りはドイツ軍との戦いで戦場の露と消えている*1。
四面楚歌の状態で、大胆さと的確な判断力によって個性豊かな戦車兵をまとめ上げつつ、追手であるイェーガー大佐をはじめとしたドイツ軍を翻弄し続けたイヴシュキン少尉は男の中の男だ。2人の戦車乗りの石橋の上での最終決戦では、イェーガーは一人の戦車兵と戦い、力尽きて斃れるという熱い生き様を示してくれた。
というわけで、本作は今年の映画では「プロメア」と並ぶエキサイティングな作品だった。