疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

2017年12月の読書

12月の読書メーター
読んだ本の数:17
読んだページ数:4026
ナイス数:81



美について (講談社現代新書)美について (講談社現代新書)感想
人間にとっての「美」を著者が深く思索した評論。感覚的に捉えられる美だけでなく、理性を駆使してその価値を解釈することで初めて捉えることができる美があるというのが趣旨であると思った。そして、真の芸術には深い人格的愛が存在し、愛こそが美しいというのは、表面的にはわかっていながらも、改めて明言されると思わず首肯してしまう。
読了日:12月06日 著者:今道 友信
歴史とは何か (岩波新書)歴史とは何か (岩波新書)感想
学生時代に何度か読んだ歴史哲学の古典的著書。歴史を「現在と過去との間の尽きぬことを知らぬ対話」と定義した一節は有名。19世紀的なオプティミズム、斜に構えたシニシズムといった俗論を排しつつ、現在の問題意識という光を照射して過去を解明することで現在の問題解決に役立てるという論旨が明快に貫かれている点で本書は名著だと改めて思った。
読了日:12月10日 著者:E.H. カー
症年症女 1 (ジャンプコミックス)症年症女 1 (ジャンプコミックス)感想
人の顔や名前といった個人情報を認識できず、12歳の誕生日に死を運命付けられた二人の少年少女の邂逅から始まる物語。少年の方はともかく、少女の方は如何にも西尾維新作品のヒロインっぽい。
読了日:12月11日 著者:暁月 あきら
症年症女 2 (ジャンプコミックス)症年症女 2 (ジャンプコミックス)感想
絵柄も情報量も極めて濃密で喉にまとわりつくようだ。本作のテーマである「個性」に関する問答を怒濤の勢いで畳み掛ける展開が続く。そして先が読めない。
読了日:12月12日 著者:暁月 あきら
症年症女 3 (ジャンプコミックス)症年症女 3 (ジャンプコミックス)感想
饒舌かつ悪趣味に個性を掘り下げた本作だが、意外なことに読後感はよかった。それは少年少女が没個性的な生よりも個性的な死に向かって疾走していたからだろうか。
読了日:12月12日 著者:暁月 あきら
バーナード嬢曰く。 (REXコミックス)バーナード嬢曰く。 (REXコミックス)感想
読書家を気取っているが、面倒臭がってロクに本を読まず読んだ気になって済ます「バーナード嬢」を主役とするギャグ&読書にまつわる蘊蓄漫画。取り上げる本のジャンルは現代の一般文芸から古典文学、評論に至るまでと幅広い。バーナード嬢はグータラ読書家なのに、なぜか紹介されている本を読みたくなってしまう。
読了日:12月12日 著者:施川 ユウキ
バーナード嬢曰く。 2 (IDコミックス REXコミックス)バーナード嬢曰く。 2 (IDコミックス REXコミックス)感想
1巻から引き続き読書家のあるあるネタやちょっと半端な読書家目線のぶっちゃけトークがなかなか面白い。とりあえず『華氏451度』とか『ノーストリリア』とか読みたくなってきたゾ。
読了日:12月13日 著者:施川ユウキ
機動戦士ガンダムSEED〈1〉すれ違う翼 (角川スニーカー文庫)機動戦士ガンダムSEED〈1〉すれ違う翼 (角川スニーカー文庫)感想
血みどろの戦争の端緒が開かれ、親友同士だったキラとアスランは互いに袂を分かって敵対する勢力につく。アニメでは若干わかりにくかった、キラが戦線に立ち続けるという決意を固めるまでの過程がわかりやすく描かれており、良い意味で原作を補完してくれていると思った。
読了日:12月16日 著者:後藤 リウ
機動戦士ガンダムSEED〈2〉砂漠の虎 (角川文庫―角川スニーカー文庫)機動戦士ガンダムSEED〈2〉砂漠の虎 (角川文庫―角川スニーカー文庫)感想
後に味方となるバルトフェルトやカガリとの邂逅の巻。2人のケバブにかけるソースを巡る論争には和んだが、直後に戦火がすぐそこまでやってくるあたり、戦争の真っ只中であると痛感する。同時にフレイとサイとの関係が縺れ、三角関係に落ちるあたりアニメとは別の意味で否応なく緊張感が走る。キラと同衾してまでも彼を戦場に縛り付けて復讐を果たそうという、昼ドラでもなかなかやらない展開をアニメでやるとは脱帽。小説版ではその背景がより詳らかに表現されている。
読了日:12月19日 著者:後藤 リウ
「武士道」を原文で読む (宝島社新書)「武士道」を原文で読む (宝島社新書)感想
著者・新渡戸稲造が日本人の精神の根底にあるとされる武士道の考え方を広く海外に伝えるために英語で出版した著書の原文を日本語訳付きで取り上げる。単語や熟語を解説してくれるのはいいけど、解説のあるものとないものを分ける基準が不明確で不親切さが目立った。なので難関大学の入試レベルの英語力がないと読むのがつらい。現代からすれば文章が古く、読んでも解釈が難しい部分も多いので、もう少し親切にしてくれてもいいと思った。
読了日:12月21日 著者:新渡戸 稲造
機動戦士ガンダムSEED〈3〉平和の国 (角川スニーカー文庫)機動戦士ガンダムSEED〈3〉平和の国 (角川スニーカー文庫)感想
ザフトの追撃を受け、アラスカへの単独行の途中でカガリの祖国であるオーブに寄港することとなったアークエンジェル一行。ここでキラとアスランが再び邂逅したことで展開は加速、2人はまたもや死闘を演じることに。ここでニコルがキラの手にかかって戦死、トールはアスランの攻撃によりMIAとなり、キラもアスランとの激闘の中で戦死したものと思われたことから、物語のターニングポイントが来たという予感。
読了日:12月24日 著者:後藤 リウ
「リベラル保守」宣言「リベラル保守」宣言感想
再読。保守を自認する人々がアンチ左翼(サヨク)として逆説的に彼らにパラサイトしている現状と訣別し、トポス(居場所)を喪失した人々を救うべし、という論旨には共感せざるを得ない。
読了日:12月24日 著者:中島 岳志
クリスマス・キャロル (新潮文庫)クリスマス・キャロル (新潮文庫)感想
クリスマス・キャロルは幼い頃に「ミッキーのクリスマス・キャロル」の絵本を読んで以来だったが、大人になって読んでみた方が感動した。心の狭いスクルージが幽霊の詰め寄られるうちに改心して優しくなっていくあたり温かい話である。そして、料理がいかにもおいしそうで賑やかな雰囲気が漂っていたのもよかった。
読了日:12月25日 著者:ディケンズ
「教養」とは何か (講談社現代新書)「教養」とは何か (講談社現代新書)感想
日本に特有の人間関係としての「世間」を論考した『「世間」とは何か』の続巻。本書は「教養」をままならぬ世間を対象化してその中でいかに生きるか、より突き詰めると「自分が社会の中でどのような位置にあり、社会のためになにができるかを知っている状態、あるいはそれを知ろうと努力している状況」を「教養」があるという。中世のコミュニケーションにおいての身ぶりの重要性やアイスランドのサガといった興味深い記述もあった。
読了日:12月26日 著者:阿部 謹也
機動戦士ガンダムSEED〈4〉舞い降りる剣 (角川スニーカー文庫)機動戦士ガンダムSEED〈4〉舞い降りる剣 (角川スニーカー文庫)感想
キラを殺したと思い込んで罪の意識に苛まれるアスランカガリに遭遇したり、アークエンジェルの捕虜となったディアッカミリアリアらクルーとコンタクトを取ったり戦争という不可抗的かつ非人道的なシステムと敵対勢力の人間同士の生身の接触という見事なコントラストがここに示される。一方、ラクスの助力のもとフリーダムという「剣」を執ったキラはいかにして戦うのか。SEEDで一番面白いのはちょうどこのあたりだと思っている。
読了日:12月29日 著者:後藤 リウ
熱帯魚は雪に焦がれる1 (電撃コミックスNEXT)熱帯魚は雪に焦がれる1 (電撃コミックスNEXT)感想
今年の百合漫画の白眉にこの時期にして出会った感がある。都会から愛媛の高校に転校した小夏と高嶺の花として扱われるも気になる相手の前では途端に不器用になる小雪という二人の関係を描く。思っていたよりも本格的な二人だけの部活動、伊代弁という方言が飛び交う地方の学校、という舞台設定が実に自分好み。小夏が先輩である小雪に対してタメ口で、態度も仄かにSッ気を帯びているあたりにも引き込まれた。
読了日:12月30日 著者:萩埜 まこと
機動戦士ガンダムSEED 5 終わらない明日へ (角川スニーカー文庫)機動戦士ガンダムSEED 5 終わらない明日へ (角川スニーカー文庫)感想
ガンダムSEEDもこれにて終幕。「所詮人は己の知ることしか知らぬ!」と神意(プロヴィデンス)の名を冠したガンダムを駆って憎悪に猛るクルーゼに対して、自分が彼とは鏡映し、コインの裏表のような関係であり、自分も彼と同じヒトという種の鬼子ではないのかという疑念に囚われつつも「それでも―護りたい世界があるんだ!」と自由(フリーダム)という剣を執って彼を討ち果たすキラという決戦の構図は見事であり、盛り上がった。それを支える人間ドラマにも読み応え(見応え)があった。
読了日:12月31日 著者:後藤 リウ

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