疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

2020年6月の読書

6月の読書メーター
読んだ本の数:21
読んだページ数:5973
ナイス数:202

代表的日本人 (岩波文庫)代表的日本人 (岩波文庫)感想
再読。ケネディ大統領がこの本を読んで上杉鷹山を尊敬するようになったことで有名。5人とも無私無欲で利他の精神に富んだ人選で著者の主観が強めだが、それゆえキリスト教徒で思想家だった著者らしさが前面に出ていた。
読了日:06月01日 著者:内村 鑑三
人間失格 (新潮文庫)人間失格 (新潮文庫)感想
読んだのは4度目くらい。
(それは世間が、ゆるさない)
(世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう?)
(そんな事をすると、世間からひどいめに逢うぞ)
(世間じゃない。あなたでしょう?)
(いまに世間から葬られる)
(世間じゃない。葬むるのは、あなたでしょう?)
一番共感できるのはこのモノローグ。
読了日:06月03日 著者:太宰 治
海底二万里 (集英社文庫―ジュール・ヴェルヌ・コレクション)海底二万里 (集英社文庫―ジュール・ヴェルヌ・コレクション)感想
ふしぎの海のナディア」の題材となったSF冒険小説の古典。初版が出た1870年の時点で最新の科学の知見や技術を畳み掛けてくるようだった。特に魚類をはじめとした海洋生物に関する記述が豊富で、さながら「読む水族館」と言っても過言ではない。当時は電気が実用化されて間もない頃。その時期にここまで想像力を働かせて脱帽。
読了日:06月06日 著者:ジュール ヴェルヌ
西部戦線異状なし (新潮文庫)西部戦線異状なし (新潮文庫)感想
第一次世界大戦でドイツ軍に従軍した著者の経験をもとにした文学作品。主人公の若者は同じ釜の飯を食った仲間が死に行き、自らも敵兵の息の根を止めるといった凄絶な経験の末に神経をすり減らしていく。その死は唐突で「西部戦線異状なし」との報告で処理される無常感に戦慄が走った。
読了日:06月08日 著者:レマルク
ある補佐役の生涯 豊臣秀長 上 (文春文庫)ある補佐役の生涯 豊臣秀長 上 (文春文庫)感想
戦国一の出世頭・豊臣秀吉の弟として、一生涯補佐役を担い続けた豊臣秀長の生涯を描いた小説。兄が織田家重臣としてその勢力拡大に大きく貢献できたのも、目立たないが調整役としては申し分ない有能な弟の存在あってこそだと言うのがよくわかる。
読了日:06月10日 著者:堺屋 太一
ある補佐役の生涯 豊臣秀長 下 (文春文庫)ある補佐役の生涯 豊臣秀長 下 (文春文庫)感想
「創業と守成、孰(いず)れが難きや」という言葉がある。天下人・豊臣秀吉は創業の人として外に向け勢力を拡大することは得意でも、勢力を維持・調整する局面である守成は不得手だった。それゆえ彼の死後、子飼いの家臣団が分裂したことが関ヶ原の戦いを招くことになる。調整力に長けた秀長にもう十年ほど寿命があれば、という想像を掻き立てられる内容だった。
読了日:06月11日 著者:堺屋 太一
PSYCHO-PASS ASYLUM 2 (ハヤカワ文庫JA)PSYCHO-PASS ASYLUM 2 (ハヤカワ文庫JA)感想
六合塚弥生と「聖母」となった滝崎リナとの分袂を描く「About a Girl」は彼女の唐ノ杜志恩への愛情はもちろん信頼の深さが窺えて個人的に好みに刺さった。六唐は本編だと断片的にしか描かれなかったゆえ。そして「別離」は宜野座伸元の過去に触れつつ執行官になってからの彼をうまく描写していた点で読み応えがあった。
読了日:06月13日 著者:吉上 亮
PSYCHO-PASS サイコパス 3 B (集英社文庫)PSYCHO-PASS サイコパス 3 B (集英社文庫)感想
都知事選編とヘブンズリープ編を途中まで。前巻に引き続き、アニメ初見でわかりにくかったビフロスト関連の事柄について整理できた。あと入江、かなりいいキャラしてる。
読了日:06月15日 著者:吉上 亮,サイコパス製作委員会
百年戦争-中世ヨーロッパ最後の戦い (中公新書)百年戦争-中世ヨーロッパ最後の戦い (中公新書)感想
1337年から1453年にかけて断続的に行われた英仏間の百年戦争の通史。土地の領有や契約に基づく封建的主従の縺れに王位継承問題が加わったこの戦争は、中世ヨーロッパから絶対王政を主軸とする近世ヨーロッパへの転換の契機となった。三部会に象徴されるような王と臣民の対話という概念が慣例化するに至ったのもこの頃。エドワード黒太子やジャンヌ・ダルクといった固有名詞は登場するものの、通史という本書の性格上記述は簡潔に示されるのみ。
読了日:06月18日 著者:佐藤 猛
草原の制覇: 大モンゴルまで (岩波新書)草原の制覇: 大モンゴルまで (岩波新書)感想
「東ユーラシア史」のカテゴリから「草原」地域の観点で捉え直した漢〜元代の中国の歴史。個人的な話で恐縮だが、大学時代の恩師や卒業論文を執筆するにあたっての参考文献の著者の著作がいくつかあって驚いた。注目したのは「タブガチ(拓跋)」の概念。信憑性には疑問符が付くが、隋や唐の皇族が鮮卑に由来する武川鎮の関隴武人集団出身であるのをタブガチの系譜と捉えられる。これが宋代に至る11世期まで健在だったということは発見だった。
読了日:06月21日 著者:古松 崇志
三体2 黒暗森林 上三体2 黒暗森林 上感想
三体艦隊の襲来に備え、人類は面壁者を選出して対抗策を練ることになる。恐ろしい侵略者のはずの三体人に三国志演義を読ませて嘘(権謀術数)という発想を会得させるシーンはシリアスさとコミカルさの境界線が曖昧で混沌としていた。そして個人的には何と言っても「銀河英雄伝説」のヤン・ウェンリーの台詞の引用があったことが印象的。一つ一つの要素自体は斬新とは言えないものの、ストーリー全体としての完成度が非常に秀逸なので読み応えは申し分ない。
読了日:06月23日 著者:劉 慈欣
三体2 黒暗森林 下三体2 黒暗森林 下感想
下巻では面壁者と三体人側が刺客として放った破壁人の時空を股にかけた、ミステリー小説もかくやと言わせるような大規模な頭脳戦が主に繰り広げられる。「敵を欺くにはまず味方から」の格言通り、面壁者は三体人だけでなく地球人をも騙し通す立場だから大変。そして観艦式のように意気軒高に隊伍を成した宇宙艦隊が、三体人の「水滴」によって瓦解に追いやられる展開は衝撃的であると同時にどこかシュールだった。
読了日:06月24日 著者:劉 慈欣
アタシのセンパイ (ヤングキングコミックス)アタシのセンパイ (ヤングキングコミックス)感想
端正な絵柄から迸る岡崎センパイの変態ドMぶりがすごくすごい(褒め言葉)。ギャップ効果とはまさにこのことか。元カノ(?)の吉田さんだけでなく塚本さんまで虜にしてしまうあたり宿業が深すぎる。
読了日:06月25日 著者:しおやてるこ
定時にあがれたら 1 (フィールコミックス FC Jam)定時にあがれたら 1 (フィールコミックス FC Jam)感想
自分としては珍しく大人な百合作品。部署の異なる気になる相手と付箋でやり取りして終業後飲みに誘ったりする湯川さんがかわいい。
読了日:06月25日 著者:犬井あゆ
ヴァンピアーズ (1) (サンデーGXコミックス)ヴァンピアーズ (1) (サンデーGXコミックス)感想
表紙はどこかレトロな雰囲気で絵柄も整っているが、コミカルなシーンも多めな吸血鬼百合漫画。テーマが近い他の作品が淫靡さや耽美さを追求するものが多い中、読みやすくて多くの人に勧められる。アリアはかわいい。
読了日:06月25日 著者:ア キリ
ヴァンピアーズ (2) (サンデーGXコミックス)ヴァンピアーズ (2) (サンデーGXコミックス)感想
キスと吸血の我慢比べとか、肝試しでビビる吸血鬼アリアとか一周回って新鮮な感じ。直球で面白い。
読了日:06月25日 著者:ア キリ
ヴァンピアーズ (3) (サンデーGXコミックス)ヴァンピアーズ (3) (サンデーGXコミックス)感想
ここに来てシリアス路線というか不穏な展開になりつつある。今後どうなるか期待半分、不安半分。
読了日:06月25日 著者:ア キリ
繭、纏う 3 (ビームコミックス)繭、纏う 3 (ビームコミックス)感想
学園の王子という在り方に雁字搦めになる華とそんな彼女を追いかけずにはいられない洋子。夜の繭を纏うことで何者でもない透明な存在になるという文言の後、夜の横浜で2人が息苦しい心境を語るシーンのコントラストが映える。
読了日:06月25日 著者:原百合子
熱帯魚は雪に焦がれる7 (電撃コミックスNEXT)熱帯魚は雪に焦がれる7 (電撃コミックスNEXT)感想
互いに離れ離れになったら寂しくなることを涙ながらに伝え合う二人のシーンがハイライト。そして今更ながら愛媛に来て、一緒に東京に戻ることを提案する小夏父だが……。今に始まったことではないが、本作は二人の家族といった大人の使い方が実に上手いと思う。
読了日:06月25日 著者:萩埜 まこと
天冥の標 3 アウレーリア一統 (ハヤカワ文庫 JA)天冥の標 3 アウレーリア一統 (ハヤカワ文庫 JA)感想
舞台はいきなり24世紀の木星付近の宙域へ。≪酸素いらず≫、宇宙海賊、救世群(プラクティス)など複数の勢力が入り乱れて繰り広げられる壮大なスペースオペラがここに来て本格化してきたという印象。
読了日:06月29日 著者:小川 一水
コーカサス国際関係の十字路 (集英社新書 452A)コーカサス国際関係の十字路 (集英社新書 452A)感想
2008年出版当時のコーカサス地方の国内事情・国際関係について詳しくわかる一冊。コーカサスはアジア・中東・ヨーロッパの境界線上に位置し、バルカン半島以上に民族・言語・宗教が混淆している地域。そのような地理的要因から、ロシア・米国・EUといった諸国が資源(主にアゼルバイジャンの石油)や経済支援を巡って互いを牽制し合っている。チェチェン共和国を巡る紛争は有名だが、民族独立の問題がロシアから見れば外交カードとなっている現状は複雑怪奇だ。
読了日:06月30日 著者:廣瀬 陽子

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