疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

2020年3月の読書

3月はあまり読めていなかった。新型コロナウイルス流行にあたって読んだ本のレビュー記事について画策中だが、進捗状況は思わしくない。

3月の読書メーター
読んだ本の数:6
読んだページ数:1776
ナイス数:96

やがて君になる 佐伯沙弥香について(3) (電撃文庫)やがて君になる 佐伯沙弥香について(3) (電撃文庫)感想
読み終えたことでスピンオフである本作も無事完結し、「やが君」の物語もついに終幕を迎えたんだなあ、という感慨に浸った。陽は沙弥香が今まで出会った人とは方向性が異なるが、だからこそ運命の出会いであるという感覚が引き立つ。彼女の容姿を考えると侑の影響が強いのかもしれないが。蛇足になるが、冒頭から「すごくすごい」とか「顔が最高」みたいな限界オタクのような語彙が飛び出していたあたりが印象深い。
読了日:03月10日 著者:入間 人間
みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」感想
IT業界のサグラダ・ファミリアと称され、2002年と2011年の大規模システム障害を経て計19年の年月をかけて行われたみずほフィナンシャル・グループのシステム統合プロジェクトの裏側。さまざまな決定権を持つ経営層や管理職のITへの無理解と現場のエンジニアとの認識の齟齬に想定外の事象への弱さといった組織の病理は日本軍の失敗を論じた『失敗の本質』にも通じるものがある。
読了日:03月15日 著者:日経コンピュータ,山端 宏実,岡部 一詩,中田 敦,大和田 尚孝,谷島 宣之
後世への最大遺物・デンマルク国の話 (岩波文庫)後世への最大遺物・デンマルク国の話 (岩波文庫)感想
金も事業も思想も後世に残せないような人でも残せるのが「勇ましい高尚なる生涯」。内村鑑三キリスト教徒としての人生観がよく表れている講演録。
読了日:03月20日 著者:内村 鑑三
主従百合アンソロジー Rhodanthe (MFC)主従百合アンソロジー Rhodanthe (MFC)感想
正統派から共依存までいろいろあるタイトル通りのアンソロジー。どれも粒揃いだが「復讐のルージュ」「お嬢様の犬」「Where You Belong」が特に好き。
読了日:03月25日 著者:雪子,他
復活の日 (角川文庫)復活の日 (角川文庫)感想
人工ウイルスの世界的流行により、南極に難を逃れた人々と原子力潜水艦の乗組員以外の全世界の人々が死に追いやられる壊滅的被害を描くタイムリーな大規模SF小説。本作の本分は南極以外の全滅ではなく、人類絶滅の淵に立たされてからの起死回生。南極に追いやられてなお人類の「復活の日」を目指す生き様を壮大に描いている。1960年代当時の時事ネタから世界各地の地理、歴史、神話、医学、生物学、物理学の知見が盛り込まれていて読み応え抜群。前回の東京オリンピックがあった1964年の作品だが、56年を経ても色褪せない傑作。
読了日:03月27日 著者:小松 左京
渚にて【新版】 人類最後の日 (創元SF文庫)渚にて【新版】 人類最後の日 (創元SF文庫)感想
再読。結末だけ見れば悲劇としか表現しようがないが、湿っぽさを感じさせない名作。最後までパニックに陥ることなく、レースに興じるなどして普段通りの生活を送って命を終える人々は恐怖と滅びの宿命に対して精一杯抵抗してみせているのだと思う。人間の尊厳と矜恃を最期の刻でも捨てない凛とした作風が好き。
読了日:03月31日 著者:ネヴィル・シュート

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