疾風勁草

子曰く、歳寒くして然る後に松柏の凋むに後るるを知る

2020年11月の読書

11月の読書メーター
読んだ本の数:13
読んだページ数:2810
ナイス数:39

安達としまむら9 (電撃文庫)安達としまむら9 (電撃文庫)感想
アニメ放送に軌を一にするかのように刊行された最新刊。メイン二人の物語としては、目立った進展はない。安達としまむら、両者の母親が対談するなど脇を固めるかのような内容だった。
読了日:11月01日 著者:入間 人間
われら (光文社古典新訳文庫)われら (光文社古典新訳文庫)感想
1984年』『すばらしい新世界』と並び称され、この二作に先んじる1921年発表のロシア発のディストピア小説。本作は『1984年』の強権を前提とする閉塞的な世界観や『すばらしい新世界』のブラックユーモアに満ちた世界観とは異なり、多角形やガラス張りの構造物から成り立つ整然かつ無機質な都市で世界の歯車として一体化する喜びのようなものが強調されているように思った。
読了日:11月05日 著者:ザミャーチン
アレックスと私 (ハヤカワ文庫NF)アレックスと私 (ハヤカワ文庫NF)感想
「2歳児の感情と5歳児の知能を持つ」を持つと称されたヨウムのアレックスを研究対象および研究人生のパートナーとした科学者の自伝的著書。多くの人々の間の「オウムはただ人間の言葉を真似ているオートマトンに過ぎない」という通説を覆し、ヨウムに感情や思考に基づいて喋る、色や数量といった概念を理解する、といった知能が備わっていることを突き止めていく過程には勇気付けられた。それにしても当時の女性科学者への風当たりは実に強い。
読了日:11月10日 著者:アイリーン・M・ペパーバーグ,Irene Maxine Pepperberg
【2020年・第18回「このミステリーがすごい! 大賞」U-NEXT・カンテレ賞受賞作】【テレビドラマ原作】そして、ユリコは一人になった (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)【2020年・第18回「このミステリーがすごい! 大賞」U-NEXT・カンテレ賞受賞作】【テレビドラマ原作】そして、ユリコは一人になった (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
「ユリコ様」にまつわる伝説が残る学校が舞台の推理小説。単純すぎず複雑すぎずの難易度で、読者の先入観を逆手に取って欺くという展開で進行していく。本作の犯人までは特定できたけど、トリックや動機まではわからない程度の推理小説に読み慣れてない人でも取っ付きやすい。終盤は駆け足だったのがやや物足りないが、エグい展開で否応なく印象に残ってしまった。百合要素もあるよ!
読了日:11月15日 著者:貴戸 湊太
【第157回 芥川賞受賞作】影裏【第157回 芥川賞受賞作】影裏感想
亡き友人の影を追う主人公の独白小説。100頁に満たない作品であり説明もほとんどなく淡々としているので、いろいろと補完して読む必要がある。どこか物寂しくも、破滅的なものに美を見出す在りし日の友人の姿が目に浮かぶ。
読了日:11月15日 著者:沼田 真佑
ジョージ・オーウェル――「人間らしさ」への讃歌 (岩波新書)ジョージ・オーウェル――「人間らしさ」への讃歌 (岩波新書)感想
ジョージ・オーウェルの作品は『動物農場』『1984年』しか読んだことはないが、面白い評伝だった。植民地ビルマでの警察官としての勤務経験、スペイン内戦で共和制側の兵士として従軍するも瀕死の重傷を負うといった経験と作品との関連性についての考察が興味深い。彼がよく使ったdecent(まともな、人間らしい)という単語の意味を噛み締めた。それにしてもイートン校時代に当時教師だったオルダス・ハクスリーと会っているのは偶然だろうか。
読了日:11月20日 著者:川端 康雄
社会科学の方法―ヴェーバーとマルクス (岩波新書)社会科学の方法―ヴェーバーとマルクス (岩波新書)感想
経済史学の泰斗による講演録。一見連続性が見出しづらいマルクスヴェーバーの思想について整理することができた。そういえばマルクスの「下部構造(経済)が上部構造(政治、道徳、宗教)を規定する」という論はヴェーバーにも継承されているんだった。他にもヴェーバーの著作を引用しつつ、彼がプロテスタント儒教とが正反対の性質の宗教であること述べている「儒教とピュウリタニズム」が興味深かった。原罪と堕落を起点するプロテスタントの人間観と、性善説と現生肯定が根底にある儒教の人間観の対比。
読了日:11月25日 著者:大塚 久雄
捏造トラップ-NTR-5 (百合姫コミックス)捏造トラップ-NTR-5 (百合姫コミックス)感想
とても久々に続きを読んだが、来るところまで来てしまった感じ。武田くんが道化にすら見える。
読了日:11月28日 著者:コダマ ナオコ
捏造トラップ-NTR-6 (百合姫コミックス)捏造トラップ-NTR-6 (百合姫コミックス)感想
最終巻は割と穏便に終幕を迎えた。スリリングさは3、4巻あたりがピークだったように思う。一応ハッピーエンドなのかな?
読了日:11月28日 著者:コダマ ナオコ
欠けた月とドーナッツ(1) (百合姫コミックス)欠けた月とドーナッツ(1) (百合姫コミックス)感想
クールな職場の先輩・佐藤あさひのキャラが好きすぎる。互いに不器用な所があるせいか、関係の進展はゆっくりめ。日照り続きで乾燥した大地に降り注いだ慈雨のような作品だった。
読了日:11月28日 著者:雨水 汐
ロンリーガールに逆らえない(1) (百合姫コミックス)ロンリーガールに逆らえない(1) (百合姫コミックス)感想
優等生の桜井さんが成績のため、不登校の本田さんを再び登校させるミッションを任されることに。桜井さんが本田さんに翻弄されるストーリーが好き。昨年から今年にかけて自分が追いかけてきた百合コミックの世代交代がスピーディーに進んでいる感があったが、ここで一つ傑作に巡り会えた気がする。
読了日:11月28日 著者:樫風
ロンリーガールに逆らえない(2) (百合姫コミックス)ロンリーガールに逆らえない(2) (百合姫コミックス)感想
本作にも守永さんというメイン二人の仲人的ポジションのキャラが登場。こうでもしないとなかなか話が進展しないようにも見受けられたが、二人の仲は確実に進展しているようでいい感じ。
読了日:11月28日 著者:樫風
民主主義とは何か (講談社現代新書)民主主義とは何か (講談社現代新書)感想
民主主義を「責任と参加のシステム」と捉え、古代ギリシャからコロナ禍の2020年の世界までの民主主義の歴史を説く。昨今「民主主義の危機」が声高に叫ばれるが、民主主義が危機的状況に陥らなかった時代などほぼないということがわかる。相容れないとされていたデモクラシーとリベラリズムの結合の可能性を主張したトクヴィルや、議会制民主主義という最高の政体によって人々の知性と徳性を高めることを説いたミルの役割について再確認。「民主主義は多数決」という通俗的な見解の問題点について明確化したいときはこの本。
読了日:11月30日 著者:宇野 重規

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